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願望、伝えた先に

 幽霊二人はテレビの前で、違うゲームでレベル上げ。

 雛多ヶ宮姉はソファで昼寝。

 雛多ヶ宮妹は俺の反対側に座って宿題。

 俺は携帯ゲームでレベル上げ。

 幽霊組はかなり盛り上がっているようで、さっきから騒がしい。

「そういえば…」

 宿題をしていた霙が口を開く。

「想儀さんは、猫はお好きですか?」

「やけに唐突だな」

 霙は、「あ、いえ、ちょっと気になって」と付け加えた。

「俺は犬派だよ。猫も、まあ好きだけど。ただ…」

「ただ?」

「猫アレルギーなんだ」

 昔、親戚の家の猫と遊んでいたら大変なことになった。

「猫とか、犬とか飼ってみたいんだけどな」

「ふむ…」

 霙は何かを考え込むかのように、ペンをくるくるさせる。そして失敗して床に落とす。

「えっと、これでよかったかな?」

「あ、はい…」

 返事をして、ペンを拾い上げる。

「あの、ちょっと出掛けてきますね。晩ご飯までには戻りますので」

「おう」

 霙は宿題の冊子を纏め、そそくさと家を出ていった。

「霙何処に行くって?」

「さあ。行き先は聞いてない」

 いつの間にか起きていた雹が、ソファから顔を出して問い掛けてきた。目はまだ完全には開いていない。

「ふぅん」

 雹はソファから降りて、俺の隣へ座った。

「ね、躰は大丈夫?結構寝てたから心配だったんだけど」

「んー、あれか、海に行った時のか」

 俺はゲーム機の電源を落とし、雹を見る。割と本気で心配してくれているらしく、笑顔はなかった。

「まあ、時雨にも言ったけど問題は無いと思う。あれは…悪霊だったんだよな?」

「うん。時雨たち程じゃないけど、はっきり人と分かるような姿を取って、いつか人に取り憑く機を伺っていたんだろうね」

 取り憑く…か。

「取り憑くのって、霊なら誰でも出来るのか?」

「いいや、取り憑けるのは、悪霊だけ。人の心を蝕み侵入する。そして、自分のものにするんだ」

 クーラーを点けて涼しい部屋が一層冷えた気がした。

「その点あの二人は侵入じゃなくて居候って感じ。親和して、人と信頼関係を築いてる。ま、絶対大丈夫とは言えないし、だから私がここに居るんだけど」

 雹は椅子から降りてテレビの方へと向かい、首だけ振り向いて俺を見る。

「あの二人と信頼関係を続けるかは、想儀が選べばいい。選べないようなことになったら、私がなんとかするから」

 俺が何か言う前に、雹は時雨の横に座った。

 なんとかする…か。そうだよな、このままずっと、なんて保証はないんだよな…

 俺は再びゲーム機の電源を点ける気にはなれず、三人が熱中しているテレビゲゲームの画面へと目をやった。

「一旦体力回復した方がいいんじゃない?」

「面倒だ」

「そのアイテム取らないのですか?」

「面倒だ」

 RPGを区切りのいいところで交代してプレイするという稀有なことをしている幽霊たち。

 見た感じ、時雨は兎に角サクサク前に進む。アイテムはガン無視、体力回復は最小限、敵も倒さなければならないものだけ倒す。ちなみに、シンボルに触れてエンカウントするタイプのゲーム。

 紗奈はフィールドのアイテムを全部取るが、戦闘は避けていく為時雨程ではないが、サクサク進む。

 雹は、性格的には時雨と同じだと思っていたが、かなり慎重派らしい。見えたアイテムは取るし、敵は狩り尽くすし、体力はアイテムと相談してなるべく回復する。しかし、敵を倒すのはレベル上げというより敵だから倒す、と言っていた。

 プレイスタイルが違う上に、短いスパンで交代する為、見ていて結構面白い。

 時雨は通常攻撃より強い特殊な攻撃を多用する為、次にプレイする紗奈の番には、特殊攻撃に必要なゲージが一割程しか残らない。

 紗奈も出し惜しみはしないので、ゲージもアイテムもガンガン使う。

 そして雹が困る。街に戻って体力回復とアイテム購入は、雹の役割となってきている。

「もうちょっと節約しろよな…」

「使えるものは使うしかないだろう。ゲームなのだから」

「そういうことじゃない」

「技の演出がかっこいいので、つい」

「まあ、いいけどさ…」

 苦労してんな。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 時刻は七時半過ぎ。

「ただいまです」

「おかえり」

 霙は帰るや否や二階に上がり、ごそごそしてからリビングに入ってくる。

「あ、もしかしてお待たせしていますか?」

 霙は慌てて椅子に座る。

「いや、まさに今座ったところだ」

 時雨と紗奈は俺たちがご飯を食べる横で、折り畳みの椅子を持ってきて座っている。たまには食事の団欒に加わりたいらしい。

 ご飯の時間が静かになることは無いだろうが、今ではそれも日常の一つ。

「大勢で食べた方が美味しいと言うが…」

 全くその通りだと俺は思う。



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