表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/72

非日常、始まり

 神社への道は意外と長かった。歩いている内に冷静になってきて、霧咲と手を繋いでいることに気付く。

 僅かな恐怖を恥ずかしさが上回ろうとした、その時。

「うおっ?」

 白い手が俺の腕や足を掴む。触れられている感覚はある。しかし、邪魔ではない。

 下らない噂話だと思っていたさ。あり得る話だと思っていても、噂だと信じていた。

 霧咲が落ち着いて俺の手を牽いてくれているお陰で、正気を保てているが、霧咲がいなけりゃ俺も走って逃げてるだろうな、これ……

「大丈夫です。人間を追い返すための威しですから。最近は楽しくなってきてるみたいですが」

 この奥にそんな悪戯をする幽霊がいるというのか。というか俺は何故連れていかれているんだ?

「……事情は着いたらお話致します。申し訳御座いません」

 また一歩、前進する、人一人、影一つ。この時はまだ何が起こるか分からなかった。

 いや……少しは解っていたかも知れないが。

 どれほどの時間歩いたのだろうか。道が開け、目的地が見えた。厳かな、不気味な、不思議な、なんとも言えない「気」みたいなものを感じる。神社というには小さいかも知れないが、祠というには大きすぎるか。

 そもそも神が住んでいない時点で神社ではないのではないのか……

「時雨様。お待たせ致しました」

 霧咲が神社(仮)の奥へ呼びかけた。すると正面にあった階段の辺りに、白い手、白い足、白い……首か?ぼんやり浮かび上がってきた。顔や髪の輪郭が出来、体、というより服が出来上がる。

「ほう。人か」

 荒廃神社の周りにあった篝火がひとりでに灯る。今はもうカタチがくっきりと見える。

 月影に映える黒色の長髪。ワイシャツに、濃紺のジーンズ。……幽霊にしては、ラフ過ぎる格好に見えるな……

「人間、私が見えるか?というか声は聞こえるか?」

「あぁ、聞こえるよ。姿も見えてる。そんなことを聞くってことは、幽霊ってことでいいんだな?」

 俺は目の前の光景に落ち着いていたし、ほぼ理解も出来ていた。何故かと言うと、まぁ、昔の話だ。

「で、霧咲。こいつは誰だ?何故俺は連れてこられたのか、その他諸々、全部説明してくれ」

「私の名前は、風凪かぜなぎ 時雨しぐれだ。紗奈、私にも説明を頼むぞ」

「何でお前も?」

「今名乗った筈だが。名前で呼んでもらいたいな。それに自己紹介をしてもらっていないぞ」

「あ、ああ……すまん。玖乃川想儀だ。風凪、なんで状況把握が出来てないんだ?」

「今までは特に知りたいと思わなかったからな。後、時雨でいい」

「では説明致しますね」

 時雨が階段へ腰を下ろし、隣へ座るよう手で促した。招かれるまま隣に座る。

 遠めに見ても綺麗な人だというのは分かったが、近くに来ると、なんというか、整い過ぎだろう。

 足は細く長くスラリとしていて……何故か靴も靴下も履いていないが。

 下から上へ眺めていると時雨が覗き込んできた。視線がぶつかる。

「うわっ」

 思わず距離を離す。

「どうしたんだ、ぼーっとして」

 幼い顔立ちの霧咲に対して、時雨は鼻筋がよく通り、切れ長気味の目で大人っぽい感じ。

「?まあいい」

 時雨は霧咲へ視線をやり、話してくれ、と言った。

「まずは私たちのことから。時雨様は御自身のことなので少し退屈かも知れませんが」

「構わん」

 にわかには信じられないような話。並みの人間には理解し難い、理解しようとしないような話。俺は並みの人間じゃないんだろうなぁ。

 霧咲が話し始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ