感情、記憶と想いを経て
「海…ですか?私はいいですけど、お姉ちゃん泳げないんじゃあ…」
「想儀が教えてくれるって」
「水着は?」
「霙も持ってないでしょ。明日買いに行くから」
「あ、明日?海はいつ行くの?」
「一週間後」
本日は終業式。それも昼までに終わり、家に帰って昼食も終えたところ。
霙も今日が終業式だったらしい。
「海か…此の目で直接見たことはないな…」
時雨は、既に海の景色を想像しているらしい。
「そういえば、服は水着には変えられないのか?」
時雨と紗奈は服を自在に変えることが出来る能力を持っている。
「視たことがある服だけなので」
ということは、明日は俺も行かなければならないらしい。
「私たちはさっと視るだけでいいので」
別にじっくり選んでくれてもいいんだけどな。
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なんてことない今日が過ぎ、明日が来て、今日になる。
「あ、待たせちゃったかな…」
ベージュのワンピースをひらひらさせながら、マカが小走りで待ち合わせ場所である駅の改札に来る。
ちなみに集合時間10分前。雹は珍しく早起きして、率先して歩いていた。
「ごめんね」
むしろ謝らせてしまう程早く来た俺たちが悪い。きっとそうだ。
謝らなくていいよ、と言った俺の隣にマカが並ぶ。
地元には大きなショッピングセンターなどは無いので、電車を使って遠出したほうが、選べる幅が広がる。
「私たちは、切符というのか?いらないぞ」
と、時雨と紗奈は改札を素通りする。分かっていてもひやひやするもんだな。
「お姉ちゃん、ダメだってば!」
「背の低さはこういうところで活かしていかないと」
雛多ヶ宮姉妹は二人とも背が低いが、平均身長よりは、なので、流石にばれる。
言い合っている横から、容赦なく大人料金の表示金額を押す。容赦する必要はないんだが。
「あー…」
「ありがとうございます、想儀さん。ほら行くよ、お姉ちゃん」
「苦労してんな…」
ローカルなトレインしか停まらないので、電車を二本ほど見送る。
「電車久しぶり…」
マカが車内を見回して呟く。マカは、混雑する可能性のある乗り物である電車は苦手だった。
「大丈夫か?」
「うん、空いてるし…ちょっとは成長してるんだよ?」
「そうだな。昔のマカのままなら電車には、空いてても乗れてないな」
二人ずつが向かいあって四人座れる座席に、時雨、紗奈、雹、霙が座る。その裏側に俺とマカ。
マカは久々に乗る電車に少し興奮しているよう。
後ろの面子は気になったが、騒ぐことなく無事に到着。
「私そんなに騒ぐことなくない?」
とは本人の弁。俺と時雨と霙から散々に言われた。お前もだけどな、時雨。
目的の駅に着き、暫く歩く。暑いので、雹と霙は体温の低い時雨と紗奈にくっつき気味に歩く。
名前は寒そうなのにな。
三分程歩いて、夏の間は冷気のバケモノであるショッピングセンターへ入る。
「想儀は他のとこ見ておいでよ。私たちだけで選んでくるから……秘密ってこと!」
「また…後でね、そう君。私は大丈夫だから」
「最早想儀さんがいないとお姉ちゃんが止まらない気が…あぁ、マカさん、大丈夫ですか!?お姉ちゃん!マカさんを引っ張っていかないで!」
「ここは、戻るまでは霙のサポートをしてやるべきか…」
「取り敢えず、全部視てきますね」
霙、頑張って。




