黄昏、楽しさを抱えて
昼食を食べ終えて、マカと霙は片付けをしている。俺も手伝おうかと思ったが、マカに座っててと言われたので、座ってぼぅ、としている。
時雨や紗奈と話すと不思議に思われてしまうからだ。
ちなみに、雹は食べ終えるや否や寝転んだまま。
片付けも終わり、帰る為に雹を起こそうと時雨がティッシュで作った紙撚りで鼻を擽ろうとしたが、
「起こすの可哀想だから…」
と、マカが止め、暫くマカの家で遊ぶことにした。テレビゲームでワイワイやってるだけだったが。
「あん?やっと食べ終わったの?」
むくりと雹が起き上がる。時刻は夕方五時半過ぎ。
「んな訳ないだろ。寝過ぎ」
実に四時間以上だ。
「んじゃ帰るわ。今日はありがとな」
「ううん、また来てね」
その顔は何処か寂しげで…昔はこんな顔見たことなかったかな…
「マカ、今日は、親は帰ってくるのか?」
「え?」
口を突いてそんなことを言っていた。
「えーっと…晩ご飯も一人だけど…」
「そうか。じゃあ、夕飯も一緒に食べないか?」
今日は、もう少し一緒に居たかった。
マカは少し考え、
「じゃあ寄らしてもらおうかな…着替えるから少し待ってて」
数分後。四つの人影と二つの影が夕陽の照らす道を歩く。
特に、他の面子が俺の家で飯を食べることに関してのツッコミはないようで助かる。
マカの家と俺の家は結構近い。十分程で着くくらい。
「すぐ作るから、座っててくれ」
「手伝うー」
年齢や見た目の話をすると怒るくせに、ここぞとばかりに、雹が子どもらしさを前面に押し出した声で近寄ってきた。
「だーめ。お前は座ってろ」
「何で」
「野菜や豆腐は幽霊じゃねぇんだよ」
どうやら日常的な刃物の使い方が苦手らしい。
「兎に角座ってろ」
「むー。でも一人で四人分は時間かかるでしょ」
「そりゃまあそこそこ」
「マカは勿論、時雨や紗奈も今は手伝えないでしょ?霙もさっき作った。じゃあ、もう私しかいないよね?」
「どうしても加わりたいのか」
「料理楽しいじゃん」
そんなセリフを、そんな笑顔で言われちゃあなぁ…
「それじゃあ…分かったよ。手伝ってくれ」
「いいの?やった」
そんなに嬉しかったのか。キッチンから追い出さなくてよかったかな。
作るのはマカロニグラタン。雹に任せる作業は、冷蔵庫から材料を取り出してもらったり、器を出してもらったり、分量を計ったマカロニを鍋に入れてもらったり。
致命的なミスに繋がらない作業を振り分けたお陰で、なんとか完成へと至った。少しは短縮も出来たかも知れない。
雹も結構満足してくれたようで、円満に作り終えることが出来た。
「そう君の料理久しぶり。美味しそうだね」
「マカにゃ負けるよ」
ダイニングのテーブルには椅子が三つしか備えられていない。ので階段下の収納から折り畳みの椅子を持ってきて、マカの隣に置いて俺が座る。
「料理を教えてくれたのはマカなんだし」
「私はただのきっかけだよ」
「十分だ。一人暮らしも出来るようになってる」
今は一人じゃないが、そんなこと言えない。
「料理以外のことも、凄く感謝してる」
「感謝は私の方だよ…私が此処でこうして居られるのはそう君のお陰なんだから…」
マカが微笑む。その笑顔は柔らかくて、優しくて。
「はーやーく食べよう」
雹がスプーンを握りながら急かしてきた。
「はぁ…そういうところが子どもっぽいんだよ」
「子どもらしさを忘れない心。敬うがよい」
「認めちゃったし、敬わないし。食べようとか言いながら食べてるし」
雹のグラタンが少し欠けていた。
「美味しいよ」
「そりゃどうも。いただきますは?」
「………」
雹はスプーンを置いて、静かに手を合わせる。
憎めないんだよな、なんだか。今更か。一ヶ月以上の付き合いの時点で、とっくに気付いていることだ。
「いただきます」
日常となった風景に一人を足して、いつも通りの昨日より楽しい晩御飯が始まった。明日をもっと楽しくする為に、今を精一杯楽しむとしよう。




