孤独、包まれて
「そだ、霙も一緒に住もう」
こいつは何を…家主に聞け、家主に。親が買ったとはいえ、親が託してくれた家だぞ。
「いえ、迷惑でしょうし、まだ中学と高校が…」
「中学はここからでも通えるし、高校も私たちと同じとこにすればいい。一人増えたくらいで今さら迷惑なんて」
勝手に説得を始めやがった。拒否する理由もないけど、受け入れる理由もないよな。つまりどっちでもいい。
「えっと…」
妹困ってるじゃないか。
「というか、お姉ちゃんって、何で玖乃川さんの家に?」
「想儀でいいよ」
「んーとねぇ…確かこいつらを見張るために」
「確かってなぁ…」
ふとテーブルの方を見ると、時雨と紗奈は話に飽きたのか、チェスを始めていた。
「ああ、霊だもんね。でも…」
「いやでも、楽しいし」
「居候じゃないか」
「役に立つこともあるだろ」
「立たないほうが多い」
時雨が入るとややこしいことになるのは知ってる。
「で、どうするんだ?」
割って入るように少し声を大きめに言う。
「お姉ちゃんと一緒に住めるのは嬉しいんですけど、迷惑になるのは…」
「別に…そうだな、迷惑じゃないよ。こんなに騒がしいんだ。姉を抑えてくれるなら大歓迎。あの幽霊は俺が担当するから」
受け入れる理由はあったな。
「いいんですか?」
これが普通なんだよな?普通はいいかどうかを聞くもんなんだよな?最早それだけで十分だ。
「ようこそ玖乃川家へ」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
こうして我が家は、昔よりも大勢で騒がしくなった。まあ…一人で居るよりは、絶対にいい。
霙はチェスを続ける幽霊たちを眺めるように、何故ここに居るのかの経緯を聞いていた。
「という訳で、想儀様に御仕えしているという訳です」
仕えていたのは知らなかったな。
「お姉ちゃんは、時雨さんと紗奈さんを倒すつもりなんですか?」
「そうみたいだが、出来るかどうか。五百年も掛かれば出来るだろうか?」
「五百年かぁ。私は死んでしまいますけど、お姉ちゃんは生きられますね」
「そんなに生きられるんですか」
「印の力で千年は生きられるみたいです。そこまで大きな力は、お姉ちゃんが初らしいですが」
「もう呪いレベルだな」
「お姉ちゃんもそう言っていました。私は呪われている、って」
少し俯いて話す。
「お姉ちゃん、自分は呪われてる、自分は霊を集めてしまう、って言って、家族以外の人と全然話さなかったみたいで」
当人は風呂に入っている。
「そんなことない、って言っても聞かなくて」
「そうでなくとも、千年も寿命があれば見た目の歳の取り方も緩やかだろう。そうなれば気味が悪い、と人は思う。だから人との接触を拒んだんだろうな。学校に行っているから断ち切れていないが」
まあ確かにな。
「まああいつのことだ。自分がそう思われたくない、じゃなくて人に不安を与えたくない、だと思うがな、私は」
へぇ。時雨がそう思うなんて。
「なんだその目は。私は一生懸命を貶したりなんかしないぞ」
それでも恥ずかしそうに目を逸らす。
「驚きました。皆さんと話しているお姉ちゃんはとても楽しそうで」
「私たちはこれから見た目が変わることも死ぬこともない。所謂同族を見つけたようなもの」
「学校でも楽しそうにしていますよ」
「…ありがとうございます。皆さんのお陰です」
「私たちはただ死んだだけだよ」
俺は生きているが。まあ、死人に比べりゃあ頑張ってる方だと思うぜ。




