邂逅、異質と共に
「雛多ヶ宮霙、私の妹」
雹よりも少し高い背、ほぼ同じ体格で、顔も似ている。まさに姉妹って感じ。ただ、雹の方が背が低いのに、姉という感じはする。
大きく違うところがあるとすれば、髪の色だ。雹は銀で、霙は黒。
「こいつはく…苗字何だっけ?」
「玖乃川想儀だ…よろしく」
「風凪時雨」
「霧咲紗奈です。宜しく御願い致します」
自己紹介を済ます。
「はい、宜しくお願いします。お姉ちゃんがお世話になっているようで」
「出てってからの私のことって知られてる感じ?」
「いや、たぶんお世話になってるだろうなって」
「失礼な」
ここで時雨が何か言うかと思ったが、黙ったままだった。要らぬ風評は流さない、普段のやり取りはあくまでじゃれあい程度のものなのだろうか。
「とりあえず立ち話も何ですし、家へ行きましょう」
その台詞は俺が言うべきだったな…思考が疲れてきている。
日常になった影に一つを足して、帰宅する。家に着き、一段落して、会話が始まる。
「今年で中学三年になりました」
「姉は斬霊を高校卒業してから始めたらしいけど」
「私は面倒だったからやらなかっただけ。霙がやれやれうるさいから」
「素質あるって言われてたから、勿体無い、って思って」
「やっぱり素質はあるんだな」
「見直したか?」
「調子に乗るなよ」
「まあまあ」
紗奈も大変だな。俺も止める側なんだけど、なんだか面白くてつい見てしまう。
「でも、お姉ちゃんは本当に凄いんですよ。八百年程の雛多ヶ宮の歴史の中で、最年少の奥義会得者なんです」
霙以外の全員が、一斉に雹を見る。
「何?」
「奥義はというのがどれほどのものか、よく分からんが…お前…凄いやつなのか?」
時雨は特にまじまじと雹を見る。信じられないのだろう。
「何度も言ってるよね?」
「実は皆二十歳くらいで、とか」
「だいたい四十歳程です」
「へぇ。凄いじゃん、私」
雹が一番驚いている。
「何で知らないんだ」
「お前には素質がある…って言われて、ちょっと修行みたいなのをしただけだったから…」
適当な。
「奥義って、どんなものなんですか?」
「どんなものか、ってカタチじゃあないんだよね」
どういうことだ。
「奥義とは言うものの、技じゃないの。ビームが出せるとか、でかい刀を造り出せるとか、そんなんじゃない」
「何だ、つまらん」
時雨が小声で呟く。俺と紗奈にしか聞こえていなさそう。
「はぁ。どんなんだ」
「何でそんなに面白くなさそうなんだよ。まあ期待されるよりはいいけど」
雹が、右の手の平を見せる。すると、何かが浮かび上がってきた。紅い模様、印のようなものが刻まれている。
「悠久と有限の印。年を取るのを極端に遅らせ、身体能力を格段に上げる力」
左手も見せる。左手は蒼。
「こっちは永劫と限界の印。出来事を完全記憶し、少し先の未来を見ることが出来る力」
最早ただ幽霊と戦えるだけの人間じゃなかった。
「未来が見える割には、知らないこと多いですよね」
「それだけは任意発動だから、なるべく使わないようにしてる」
「何で」
「愚問だね」
指を振る。
「面白くないじゃない。未来が見えちゃったらさ」
雹の笑顔は、何故かそれだけで安心出来るんだよな。




