心身、出逢う
テスト当日、初日。勉強したのはいいが、あまり身についていないような。色々有りすぎたからかな。
静まる教室。いつもは気にしない時計の針の音。シャーペンを走らせる音。
高校初のテストということで、大して難しくもない問題を解いて、余った時間を寝て過ごした。
これを五日間。無駄に日数を使って進行するテストは、楽しくもあり退屈でもある。
「あんなの高一の時やったっけ?」
「高一を過ごしたことがあるのは雹だけだ」
一教科が終わるごとに、ほぼ毎回この会話をしていた。
「やっと終わったね」
マカが安堵の表情を見せる。
「あの程度、二十分もあれば終わるだろうに。何故時間をもっと有効に使わないのだ」
「終わらない人も居るかも知れないだろ」
「この問題はAですね。どちらかと言うと、喜びより哀しみが表現されている一文です」
紗奈はマカに国語の問題の答えを教えていた。
「紗奈ちゃんって、凄いね。どの教科も得意で、難しいことも沢山知ってて」
「大したことでは無いですよ。ただそれだけしか得ることが出来なかっただけで…でもこれからは、違うことを学べそうです」
楽しそうに話す紗奈。そういやマカも皆に馴れてきたみたいだな。仲良くやれているようで良かった。
「じゃあ月曜に」
マカと今週最後の学校に一時の別れ。スーパーに寄って帰る。時刻は夕方五時。
「ん?アスファルトが…」
「抉れていますね」
目の前のアスファルトが掬い上げたかのように無くなっていた。そんな光景を見ても俺たちは大して驚かなかった。俺に至っては、驚かないことに驚くくらいだ。
「人の業じゃ無さそうだが」
「こっち」
雹が歩き始める。嫌な予感しかしないんだよ、もう。
雹に連れられて歩いていると、キィン、と金属で何かを弾いたような音。
「何かが居るな。近いぞ」
時雨がそう言うと、皆が速足になる。すると、
「せやっ!」
急に黒い塊が飛び出してきて、それを追い掛けるように、少女。少女はサイドテールを揺らしながら、刀を振り回す。
刀身は…二メートルを超えているかも知れない。
振り回すとは言ったが、それはとても美しい軌道を描きつつ、的確に黒い塊を追い詰める。
最早少女が長刀を持って、訳の判らないものと戦っていることには驚かない、驚けない。
逆袈裟斬りが決まり、黒い塊は霧散していった。この狭い路地で器用に扱うもんだな。と、感嘆していると、雹がぱちぱちぱち、と軽い拍手をしていた。
「やるじゃん」
知り合いなのか?と聞こうと思ったが、
「お姉ちゃん?」
答えは向こうからきた。サイドテールの少女は、驚きと喜びが混ざったような顔で刀を下ろす。
また何かが起こる。俺は溜息を吐くしかなかった。




