存在、今を繋ぐ
あれから、業者と名乗る人たちが来て、窓を直して新しいテーブル置いて帰っていった。雹が呼んだらしい。
嘘みたいな一日だったが、目の前で起こってしまったのだから、信じるしかない。
嘘みたいな連中と一緒に暮らしているので諦めるしかない、と言った方がいいのかな。
翌日、学校。
「おはよう、そう君」
笑顔でマカが迎えてくれた。
「英語、どうだった?分からないところがあったら遠慮なく聞いてくれよ」
「うん」
よし、どうやら昨日起こったことはなんとも思っていないようだ。特に変わったところは見られないが、雹や時雨、紗奈も怪しむような表情をしていないということは、昨日の霊が戻ってきているなんてことはないだろう。
昼休み、こっそり雹に訊く。
「昨日のアレ、どうするんだ?」
「片付けたよ」
「え?早いな」
「残霊師なめんなよー」
ぷらぷらと左手を振りながら、右手でサンドイッチを持ってかぶりつく雹。
「簡単に見つかるものなんだな」
「いや、あいつが分かりやすいの。綺麗な人型だったし」
「…人型?」
あの靄が?
「時雨や紗奈には及ばないけどね。てか、想儀には何に見えてたの」
「黒い靄の塊」
「ふーん。ま、当然か」
「当然?」
「想儀は見たくなかったんでしょ」
見たくなかった…霊自体をか、マカに取り憑いた霊を、か。
マカに取り憑いていたのなら、出来るだけ目を逸らしてはいけない現実の筈なんだけどな…
「なあ、もし雹たちが一緒にいなかったら、マカは今頃…」
「そうはならないよ。その為に、この町に斬霊師がいるんじゃん。任せとけってーの」
頬にパンの欠片を付けて、最高の笑顔を見せてくれた。忘れられないような、眩しいものだった。
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勉強会も滞りなく終わり、明日はテスト。仕上げもそこそこに布団に入る。
夢の中なのだろうか、やけにリアルな世界。静まり返った街に俺は居た。白黒で、俺は俺の視線でそれを見ている。
「今晩は」
そう聞こえた、気がした。
気付けば朝で、俺は汗をかきまくっていた。不吉な夢だったのだろうか。
痺れている。何処がかは分からないが、そんな感じ。靄がかかっている気がする視界。此処が夢?俺は何処に居る?
俺は……
「どうしたんだ?凄い汗かいているぞ」
現実。時雨が目の前に立っていてくれている。
「いや、何でもない、大丈夫だ」
「そう見えないがな。テストなんだから、体調は整えていたほうがいいのだろう」
時雨が俺の首の下辺りに触れる。
「安定はしているな。しっかり汗拭いておけよ」
そう言って、袖で首と額の汗を拭いてくれた。
確かに触れた感触。速くなる鼓動。今、俺は現実にいる。




