対峙、見えないままに
モヤモヤした思考を治めようと寝ようと布団に入った時、
「あれ?真っ暗だ。もう寝たのかな?」
雹が帰ってきたようだ。
トントントン、バン!
「起きろっ!」
階段を駆け上がり、雹が勢いよく部屋に入ってきた。
「起きてるよ」
「ならいいや。これ、持ってきた」
一枚の札を差し出す。
「何これ」
「札」
見たら分かる。
「あんなに威勢よく準備してくるって言って、これ一枚かよ」
「もっと色々必要だと思ってたんだけど、かーさんにこれ持ってけって言われて」
訳の分からない文字がゴチャゴチャ敷き詰められている札。どうやって使うのだろう。
「使い方が分かんないんだよね」
分からんのかい。
「まあ事はあの子に会ってからだね。寝よ寝よ」
まさに寝るところだったんだがなぁ。
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翌日、俺は終始マカを観察していた。が、特に何も分からない。少し大人びたかなぁ綺麗になったなぁ、くらいしか。
放課後、勉強会をする約束をしていたので、一緒に帰る。
家に着き、手筈通りマカをソファへ座らせ、一息ついたところで、
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどー」
雹がマカに話かける。
「はっ、はい、何かな…」
やはり、雹に対しては心を許しているというか、怯えが少ない。
「小さい頃から体弱いらしいけど、昔に何かなかった?こう、何かに襲われた、みたいな」
「襲われた…」
「何でもいいよ。得体の知れないモノ限定だけど」
「ううん…無い、かな…」
「そ。まあいいや。今から少しだけ、記憶の時間を貰うよ」
「え?」
雹は素早くマカの額を右の人差し指で突く。マカは全身の力が抜けたように首を傾けた。
「警戒心が高いのかなんなのか…兎に角、長い時間はもたない。心幹にコンタクトする。紗奈、お願い」
俺はマカの隣に座り、手を握る。雹は止めなかった。
「何をする気だ?」
「少し、心の表面を見させてもらいますね。大丈夫です、痛みはありません」
マカの胸の前に手を翳し、目を瞑る。およそ三分後。
「見つかりました。どうやら、真夏さんの生命エネルギーを少しずつ奪取しているようです。多く吸い取ったときに、大きく体調を損ねるのでは、と思います」
なんてもんが取り憑いてやがるんだ。
「引っ張り出せない?」
「それは雹の役割じゃ?」
「私には、無理かな」
ははは、と笑う雹。笑ってる場合じゃない。
「私がやろう。札を貸せ」
「ここで使うのか?」
「その為の物だろう。ヒトと霊を切り離す札だ」
時雨はさきほどの紗奈と同じようなポーズをとる。違いは札を持っていること。
「ん…マズい」
札が光り、バラバラになる。
「下がってください!」
紗奈が前に立ち、雹がジャックナイフを構えて、更に前に立つ。そんな大事になっているのか、これ。
急に、真っ黒の塊が、テーブルの上に現れる。
「あれが?」
「エネルギーを得たおかげで強くなってるな。ま、この程度なら…」
「体、借りるぞ」
時雨の姿が消えた。




