困惑、突き刺さる
「そろそろテストだし、勉強教えないとな」
五人揃って下校する。マカは、当然の如く周りを取り囲む三人に怯えている。
「覚えててくれたんだね」
「当たり前だろ」
「そう君の家でいいかな?」
五人が我が家の前で立ち止まる。しまった、どう説明すれば…
「えっと、こいつらは…」
「友だち。一緒に勉強寄せてもらうけど、気にしなくて大丈夫だから」
いつもと雹の雰囲気が違う。
「そう、友だち。分からない所は、皆にも教えてもらったらいい」
「よ、よろしく…お願いします…」
目はまだ見れていない。俺の横にぴったりくっついて、怯えている。
紗奈は、よろしくお願いします、と返す。時雨は返事はするが、歯切れが悪いような感じ。雹はマカを見詰めている。
あまり怯えさせるんじゃないぞ。
「教えると言っても、中学の終わりの辺りだな」
中学のときのノートを引っ張り出してきた。
「そう君は教えるのが上手だね。昔から私に教えてばっかりだったからかな…」
マカは小さい頃から体が丈夫ではなかった。休んだ日の授業の内容は、マカの体調が良くなったらどちらかの家で俺が教えていた。
「マカの飲み込みが早いんだよ」
「そんなことないよ…」
恥ずかしそうに俯き、ノートに数式を写していく。
時雨と雹は、揃って暇そうに絵を描いていた。そうなるだろうな。
紗奈は楽しそうに、訳の分からんなんたらの定理みたいなのを解いていた。こういうのが好きなのか。なんか買ってきてやるのもいいかも知れない。
公民のノートから要点を教え、一冊は重くならないから、と公民のノートを貸す。
「今日はありがとうね」
明日も明後日も、テストまで一緒に勉強する約束をした。家まで送る、と言ったが、近いから、と申し訳無さそうに断られた。バイバイ、と小さく手を振って離れていく影。
見えなくなったところで、家に戻る。
「ちょっと話がある」
雹が会った頃のような真剣な顔でソファに座っていた。時雨と紗奈も、椅子に座っていつもより真剣。
「どうしたんだ?そんな真剣な顔して」
「真剣な話だからね。…あの真夏って子、取り憑かれてるよ」
唐突。耳を疑う。
「憑かれてるって…霊的な何かにか?」
「想儀は見える人だから、気づいていると思ってたけど、そうでも無いみたいだね。あの子の心に、何かが乗っかってる。今回の入院は恐らくそれが原因」
そんなこと、あるわけが。時雨と紗奈を見る。
「知っていたのか?」
「薄々はな。程度は違えど霊ではあるからな」
「見えてはいました。何かが分からなかったので、心配をかけないようにはしていたのですが」
俺が見えなかったのは、何故だ?
「さあ。見たくなかったんじゃない?」
なんだそれ。
「昔から体が弱かったのもそれの所為だってのか」
「それは分からない。今は、現代医療の所為でマカの心身が回復したから、霊の力が弱まった可能性がある」
「どうすればいい」
「任せろ。私が何とかしてやるからさ」
頼もしい限りだ。
「まずはどのようなモノなのかを把握する必要があるのですが。雹さん、何か分かっていることは有りませんか?」
「ただの悪霊か、苦しがっている霊か。情報が少ないな。何にしろ準備がいる。早くしないと」
どうなるんだ。
「悪化して大変なことになっちゃう、かも」
大体分かっていた。急にえらい重くなってきたな。
「そうはさせないよ。私に見つかったが最後だ」
こうしちゃいられない、と家を飛び出し、実家に帰った。
「威勢よく出ていったが、全ては明日になってから。今日はゆっくり休め」
出来ることをしろ。そう言っているんだろうな。飯を食って、風呂に入って、寝ることにした。
いきなりで、信じられないようなことも、すんなり受け入れられるようになってきた。
俺は、皆を信じている。




