再開、潜り抜けて
紗奈と時雨と出会い、雹と出会った。
雹が転校して来てから暫く経ち、学生の課題とも呼べる週間が近づいてくる。
「テスト?」
そう、テスト週間。俺はあまりテストは嫌いではない。自身の実力を知るのは割と楽しいと感じられる。
「三人は勉強は出来る方なのか?」
必要性は度外視で。
「私は、人並みには出来ます」
「私もだな。紗奈の記憶を共有しているので、同じ位か」
「まあ私には及ばないだろうけどな」
どこからその自信が出てくるんだろう。
「十九年程度に負ける気は無い」
「量や時間じゃない、性能だ。必要なものを必要な時に引き出す能力」
「ふん、それさえ勝てるかどうか」
早速睨み合いが始まっている。放っておこう。
「そういや、そろそろかな…」
「何がですか?」
小さく、独り言のつもりで呟いたが、拾われた。
「小学生のときからの友だちがいるんだけど、そいつが中学卒業間際に調子悪くなって入院してて、最近調子良くなったって聞いたからそろそろ退院かなって。テストまでにはって言ってたから」
「所謂幼馴染みですね」
そうだけど、もうちょっと他に突っ込みどころあったろ。
「退院したら勉強教える約束なんだけど…」
「そういや、想儀はどれくらい勉強出来るんだ?」
「大したことないぜ。いや、本当に」
努力は出来るが。
「じゃあ私の敵じゃないね」
「そんなこと言ってて、もし私たち全員より低かったらどうするつもりだ」
「うーん…想像出来ない」
かなり根性がすわっているのかも知れない。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
夕食を食い終わった頃、電話がかかってきた。
「はい、もしもし」
「あ、そう君?」
この声…
「そうだけど、もしかしてマカか?」
「うん、久しぶりだね」
「退院したのか」
「昨日ね。体調すっかり良くなったから」
「そりゃよかった。学校はいつから来れるんだ?」
「明日から」
早いな。
「今日は退院報告だけ。明日たくさんお話しよ?」
電話は疲れる。俺もだし、マカもそういう人間だ。じゃあまた明日、と電話を切った。久しぶりであるが故に、電話で全てを語り合うことはしない。どうせ明日会えるんだ。
「だーれから?」
雹が真後ろに、時雨と紗奈がソファに座って、俺を見詰めていた。
「近い。えーと、今日話した幼馴染みだ。東神 真夏って言って…って紹介は明日でいいか」
雹を押しのけて、俺はテレビの前に座った。
寝る前の行動は皆それぞれ。
俺と時雨はゲーム。紗奈は漫画で、雹は朝起きられないという理由で、日付の変わらない早い内に斬霊。
俺はRPGをやっているんだけど、イマイチ止め時が分からないので、雹が帰ってきたら止めるようにしている。なので夜更かしが基本になっている。
そんなこんなで皆就寝。俺は、妙に学校が楽しみで仕方がなかった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「ええっと、東神真夏です。入院していたので、初めての登校で、よ、よろしくお願いします…」
どんどん声が小さくなっていった。俺からすれば、マカにしては大きい声が出ていた、と思うくらいだが。
マカは結構な人見知りで、大勢の前で話すことにも慣れていない。つまり、だいぶ内気。
「久しぶり…だね、そう君」
マカの席は俺の一つ前。ずっとそこにあり続けていた。
一時間目の休み時間、マカは躰を横に向け、視線を俺と合わせる。俺は大丈夫らしい。まあ小学生のときからの付き合いだしな。
と、中学の頃からマカを知っている何人かの女子に囲まれて、おどおどしまくりのマカ。
離れたそうにしていたが、女子が話しかけているので、そうにもいかない。そんな感じの視線を送られたので、時雨と紗奈に目配せする。数日経って解放された雹も、マカの席までやってきた。
「昨日も聞いたけど、体調はどうだ?」
俺とマカが幼馴染みなのは周りの女子も知っているので、特に不思議がられない。寧ろ当然くらいでしょ、くらいなものである。
「う、うん、大丈夫…」
「結局、何の病気だったんだ」
「えっと、それがよく判らなくて、熱が引いて食欲も戻ったから退院出来たって感じで…」
入院は遠い病院だったので数回しか見舞いに行けず、その頃はあまり現状把握が出来ていなかった。
「好きな食べ物は?」
「え?えっと…蕎麦…かな…あったかいの…」
雹が質問すると元に戻る。が、雹の容姿はマカにとって安心出来る要素らしく、他の女子に比べればまだ話せている方だろう。
その後、雹や時雨、たまに紗奈や他の女子の質問を耐えつつ、俺の助け船に掴まるマカは、退院早々疲れた顔をしていた。




