団欒、何処へでも
朝飯を食べ終わった頃に雹が起きてきて、用事がある、と直ぐに出掛けていった。
眠たい目を瞬かせつつ学校へ向かい、チャイムが鳴るまで男子連中と話をして時間を潰す。
時雨と紗奈は二人で談笑していた。
大体の学校がそうであろうチャイムの音が響き、生徒たちが席に座る。教師が入ってきて――見たことある人物が後に続き入ってきた。
「は?」
ついていた頬杖がずれて、変に傾いてしまった。
「転校生だ。自己紹介を」
背の低い転校生は、背伸びをして黒板の出来る限り高い位置に、チョークで自分の名前を書く。
「雛多ヶ宮雹です。よろしく!」
爛漫な笑顔は、身長も相俟って完全に小学生である。周りでは当然のように「小学生?」「飛び級じゃね?」などと騒がれている。飛び級ならもっと上の高校だろうよ。
雹は意気揚々と、廊下側一番前に用意された席へと着いた。
「まったく…」
呆れるしかない。あいつの行動力は、想像以上に高めだと認識しておかなければ。
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休み時間になると、雹の周りは生徒で溢れかえっていた。
他のクラスからも話を聞きつけて、授業を経る度に生徒の数が増えていく。すっかり人気者のようだ。
「彼処には近付きたくないな…」
時雨が苦い顔をして雹の席を見る。実際はもう、名も知らぬ生徒の背中しか見えないのが現状だ。もみくちゃになってボロボロになっていないか心配になってくるくらい。
「注目されすぎるのも考えものですね…誰にも気付かれずに過ごしてきましたが、特に寂しさは感じませんでしたし」
紗奈も苦笑いをしている。俺もだ。
転校生なんてあんなものだろう。あの見た目なら尚更。きっと直ぐにこの騒がしさも落ち着くだろうし、俺の方まで飛び火しなければまあ、勝手にやっておいてくれといった感じ。
だが、放課後になってくたびれた姿に変わり果てた雹を見て、少し哀れになってしまった。
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「どうだ?驚いただろ」
四人しか居ない教室で、復活を遂げた雹がニヤニヤしながら俺たちの反応を見ている。出掛ける、って言っていたのは、多分この手回しをしていたのだろうけど…
「どうやって入れたんだ?」
何故か、は聞かない。どうせ、私も、って言うに違いない。
「秘密だ、秘密。雛多ヶ宮の底力をそう簡単に教える訳には」
なるほど、家の力か。雛多ヶ宮家の権力というのはどれほどのものなのだろう。聞いたこともない家名だけど。
「一つ言っておくが、学校はたいして面白くないぞ。お前も学ぶことなんか無いだろう」
時雨が何故かここでも上から目線。
「知ってるよ、私だって高校は卒業したんだぞ」
「じゃあなんで」
「お前らがわいわいしてる時間に、一人で居るほうが面白くない」
ほら、思った通りだ。
「んー疲れたな。明日も囲まれるようなことがあったら、ちゃんと助けに来いよな」
びし、と俺を指差すが、ごめんだ。面倒だからな。
はいはい、と適当に返事をして、俺は鞄を持って教室を出た。




