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騒がしくも、日常へ

 雛多ヶ宮は普通に風呂に入るそう(普通は風呂に入る)なので、俺が一番風呂をもらって、次に雛多ヶ宮。時雨と紗奈は暫くはいいらしい。

 いよいよ就寝な訳だが…狭い。何がって、部屋が。

 ベッド一つ、机と椅子一つ、本棚二つ。元から広くない部屋、一人で十分な部屋な訳で。そこに四人も居るもんだから、狭い。

「私はここで寝ればいいのか?」

「そこは私たちの布団だ」

「考えたんだけど、二人ともベッド使っていいよ。雹は…他の部屋もあるけど、どうだ?」

「玖乃川様がベッドを下りるのは…」

「お前は本棚の上で寝ていればいい」

「お前がそっちで寝ろ」

 騒がしい議論が収まりそうになかったので、手を打ち鳴らして注目を集める。

「取り敢えず、言うこと聞け。時雨と紗奈はベッド。雛多ヶ宮は布団を使っていい。俺は隣の部屋で寝るから。いいな?」

 紗奈は何か言いたそうにしていたが、反論は無さそうだった。性格的に、俺にベッドを使わせたいが、俺の意見にしつこく反対するのも気が引ける、といったところだろうか。声を張った甲斐があった。

 時雨は、

「隣の部屋で寝るなら此処に布団を持ってくればいい。寂しいだろう?」

 やけに甘い声で誘惑してきた。年上のお姉さんにこんな風に言われては、俺も声が詰まる。

「だから…狭いんだって」

「此奴がこんなに小さいんだ、問題無いだろう。それに、私がわざわざこの部屋を選んだ意味がなくなる」

 時雨は雛多ヶ宮を指差し、続いて少し寂しそうにした。お前がかよ。

「まあ…いいけど。雛多ヶ宮は?」

 指を差されて不満気に時雨を睨み返している雛多ヶ宮は、俺に問われて表情そのままで俺を見る。視線の威圧感が見た目相応ではない。

「まず言いたいのは、雛多ヶ宮よりも雹って呼んでほしいことかな。長いし呼びにくいでしょ」

「まあ…な。分かった、雹。で、どうなんだ?」

「こいつらと同じ部屋で布団で寝られるならいいよ。家でもベッドじゃないし」

「そうか。じゃあもう一つ布団持ってくるから、待ってな」

 何故俺はこんなに布団を運んでいるのか…肉体的ではない部分の疲労が蓄積してきている。

 我が家の布団は、家族分で三つ、来客用に二つある。俺の部屋に運んできた布団はどちらも来客用である。

 雹はドア付近に敷いた布団、時雨と紗奈はベッド、俺は机とベッドの角に詰めた布団にそれぞれ入る。

 最終的に文句は出なかったので、円満だということにしておこう。

 二日連続でこんなことがあったんだ、暫く何も起こらないだろう…落ち着けるかは微妙だが、布団は偉大だ。疲労が融けていく。

 雹は、枕が変わると寝れないとか言って、うだうだしてたくせに真っ先に寝やがった。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 朝起きると、時雨と紗奈は起きていた。1階から音が聞こえるので、また朝食の準備をしてくれているのだろう。

 雹はまだ寝ているようなので、踏み付けないようにそっと部屋を出る。掛け布団がめちゃくちゃになるくらい寝相が悪いし、アホみたいに口を開けていた。もう少し、少女という自覚を持ってほしい。

 今日はいつも通りの時間に朝食を済ませて、学校に行く支度が出来た頃に雹が起きてきた。

「どこ行くの?」

 寝起きの典型のように眠たそうに目を擦りながら、シャツとローライズパンツという寝間着姿。下着なんだろうな、これ…

「平日にこの格好ならだいたい分かるだろ」

「………私はどうなるの?」

 面倒が片付かない。助けてほしい。

「留守番でもしておけ。それくらいなら出来るだろう」

 時雨は相変わらず雹に対して上から目線。

「お前らも行くのか?」

「制服着てるんだから当然だろう」

 時雨は初登校みたいなもんだけどな。

「私も行く」

「ですが、誰ですか?ってなりますよ」

「お前らはどうなんだよ」

「私たちは幽霊ですので、気付かれにくいのです」

「………今回は諦めてやろう」

 どうやら、寝起きでも頭の回転は早いらしい。雹は不敵な笑みを浮かべて、何かを思い付いたように 出掛けるから、と言ってリビングへ引っ込んでいった。

「何をするのだろうか。ろくなことじゃなさそうだが」

 どうせそうに決まっている。最近は厄介ごとしかないからな。こうなってくると、慣れが怖い。

 足取り重めに学校へ向かう。隣は凄く軽そうにしているというのに。



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