夕方、始まる時まで
なんとか遅刻せずには済んだ。俺は息を切らしていたが、隣の二人は澄ました顔で教室に入る。
どうやら少し浮いて、飛んでいたらしい。というか、
「何でお前がいるんだよ」
普通に、俺と霧咲の後ろについてきた時雨。
瞬間、教室の廊下側の生徒たちが俺の方を見る。聞こえてないといいけど、そういう訳にもいかないか…
「今私の姿は認識されていないぞ?あまり私に向かって話かけない方がいい」
この行き場のない言葉、どうしてくれようか。
「いや…何でもねぇ」
そう言って、席に着いて直ぐに寝たふりをした。すぐにチャイムがなって、数学担当の教師が入ってきたが、構わず伏せ続けた。
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昼休み。
「昨日の夜、あれからどうしたんだ?」
友達に聞かれる。
「あー、お前らがどっか行ったから、俺も帰ったよ」
「あの噂が本当だったとはな」
「今日も行ってみるか?」
「もう勘弁だ、行かねぇ」
行っても跡形もねぇけどな。
本日の授業が全て終わり、生徒たちがぞろぞろと教室から出ていく。俺たちは教室で少し話してから帰ることにした。
「時雨は、これからずっと無言で後ろに立ち続けるのか?」
ずっと腕組みして教室の後ろにあるロッカーの上に座っていた。他の奴らは見えてないんだろうが、俺は見えるので気になる。
後、不機嫌な圧が凄い。俺から離れられないので、嫌でもついてくるしかないのだが…
「何とかしろ。暇で暇で死んでしまいそうだ」
死なんて、むしろ一番軽い苦しみなんじゃないのか。
「苦しみには変わりない」
物凄く不機嫌。
「時雨様も御入学されたらどうでしょう」
霧咲の提案は人間には思いつかなさそうなことだが、幽霊ならではの考えだからだろう。
「どうやって?」
「ほんのりと。あたかもそこに居たかのように」
無理があるんじゃあないか?
「まあやるだけやってみましょう」
「制服は?」
「コピー出来ますので」
そういやそうだったな。
「じゃあ明日やってみようか」
時雨を見ると、いつの間にか制服に変わっていた。割りと乗り気なようだ。
それにしても、似合うものだ。
その後、空き教室から椅子と机を運んだ。席を置いたのは、六列ある内の、廊下側から二列目の一番後ろ。
ちなみに霧咲は廊下側から三列目の前から三番目。学校が始まって、初日で席替えが行われている。
「五月の中間テストまで席替えは無いそうだから、暫くそこな」
「まるで私が、この位置に不満がある子供のように扱うんじゃない」
そう言う時雨は、妙に楽しそうだ。
ほとんどの生徒が校舎から出ていき、今学校には部活に入っている生徒か教師しかいない。
「そろそろ帰るか」
傾いた陽。三つの人影に一つの人影がぶつかる。




