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出会い

どうも、暗殺者が幻想入りの子藤貝です。

この度オリジナルをのんびりと執筆してみようと

思い、とりあえず書いてみることに。

のんびりとお付き合いいただけると幸いです。

古来より、人は死に恐怖してきた。

その恐怖から、人々は死に対しての理由を模索し、科学もまだ発達していない頃、ある一つの仮説を生み出した。


古来より人々は神が存在すると考えていた。

神は様々に存在していたが、それぞれが役割を持っていた。

そして、ある神が生み出されるのは必然であった。


死を司る神が存在するのではないか、と。


そうしてそれは生まれた。






どうも。わたくしゼノンと申します。私、今現在相談室なるものをやっています。人は誰であれ、何かの悩みがあるもの。悩みはそのままにしておけば、後悔へとつながります。やがて死んだ時には更に酷い。それはもう現世への執着となり、悪霊となる原因となりうる。


私ゼノンはそういった霊や人間の悩みを聞くのが仕事です。本来であれば、私の仕事は魂を導くことなのですが、私は仕事が下手で現世の職場に左遷されてしまい、こうして悩み事の相談に乗っているというわけです。たまに同僚の悩みにも乗ったりしていますがね。どうにも、私は種族としてかなり異端なようです。まあ、相談事が好きな**なんて普通いませんから。


おや、お客さんがいらっしゃったようです。

さてさて、本日はどのような悩み事でしょうか?

ふふふ、人間の神父にでもなったような気分ですね。






氏守市には都市伝説が多々ある。


曰く。渡川に架かる氏守大橋には、投身自殺した怨霊が蠢いているとか。


曰く。氏守商店街の裏通りには、顔が人間の犬が生息しているとか。


どうにも信憑性が薄いが、そういったよくある噂が、普通の都市よりもちょっと多い。中でも有名なのが、同じく裏通りに存在する、通称"古巣"と呼ばれる廃墟の建物群のどれかに、ありえないはずの地下が存在し、そこには人ではないものが存在し、人の悩みを聞いてくれる。そんな噂があった。


この噂だけ、実は実例がいくつかあるのだ。私が通う高校、氏守第一高校に、悩みを解決してもらったという卒業生が何人もいるのだ。ある人は体型の悩み、ある人は受験の悩み、中には自殺寸前だったところを救ってもらった、なんて話もある。


私、明山寺凛音には大した悩みはない。学力は中の上、運動神経は人よりも良い方。友人関係も豊富で、部活動の新聞部も順調だ。まあ、いわゆる普通の一般人、だと自分では思っている。しかし今、私は裏通りの"古巣"へ足を踏み入れていた。理由は単純。スクープが欲しいのだ。


私の将来の夢は新聞記者。悪を暴く正義の新聞記者だ。だから新聞部で積極的に活動し、市から幾つもの賞を受けたりしている。自画自賛ではあるが、事実である。スクープのためにいくらか危険なことをしたこともある。市の汚職議員の時が一番危なかった。あの時は銃撃戦とかになって本当に死ぬかと思った。まあ、その時の付き合いから市の、ヤのつく人達と仲良くなれたのは幸運だった。


さて、今私は聴きこみ調査から、最も地下がありそうな廃墟、"ガラガラヘビ"と書かれた大きなビルの前にいる。ここらへんで一番大きなビルであり、元々はデパートらしい。確かにこの規模なら地下があっても不思議じゃない。


「よし、行きますか!」


意を決して、私は廃ビルに入った。






「あら? 普通の人間が来てるわ……」


私は彼女の背後から、彼女の様子を窺っていた。私は地下にいる彼へと連絡をするため、ポケットから不気味な見た目の機械を取り出す。苔が付着したような色に、おどろおどろしい装飾がついたそれは、私達の世界で一般的な、情報端末兼連絡装置といった、人間で言う携帯電話のようなものだ。尤も、これは電波を使っていないのでどこへでも連絡できるが。


(見た目をもうちょっと何とかしてほしいわ……)


ため息をつきつつ、彼に連絡した。






「あっれー? ここなら地下があってもおかしくないと思ったのに・・・」


何故か電気が通っているエレベーターに乗ってみても、1階から3階までのボタンしか無く、B1の文字はない。ビルの見取り図をよく見ても、地下へ通じる階段はない。デパートなのに地下駐車場がないのは、一階の半分を使った駐車場と、外にあるやや大きめの駐車場があるからだろう。


「ミスったかな……? ん?」


ビルの見取り図を見ていた時、何か不自然なものを感じた。


(一階の非常階段のところ、なんか踊り場が狭い……?)


見取り図ではなにもないのだが、明らかに二階へ続く階段の踊り場が、妙に狭く感じた。壁を叩いてみると、普通しないはずの空洞音。


「うん、間違いない。何かあるねこれは」


壁にはよく目を凝らさないとわからないが、新しめのペンキが塗られていた。分かりづらかったのは、意図的に汚されていたような汚れのせいだった。


「さてさて、何があるのやら……」


壁の端を見てみると、薄っすらとだが四角い溝がある。何かのカバーのようだ。爪を立てて剥がしてみようとしたが、固く固定されているらしい。


「どうしよっかなー。あ、そういえば一階にドライバーが置いてあったっけ」


急いで玄関近くにある警備員詰所に戻る。窓口にドライバーが置かれている。


「よし、これで何とか……」


「貴女、何をしているの?」


「うひゃあ!」


吃驚して腰が抜けてしまった。情けない。どうにもホラーが苦手なせいか、脅かされるのに弱い私。振り返ってみると、


「あら。貴女、氏守高の制服を着てるってことはそこの生徒?」


「は、はい!」


ものすごい美人がいた。さらさらの黒い髪をショートで首あたりで切り揃え、黒いスーツを身に纏ってはいるが、それでも自己主張をしている胸。引き締まった感じのする女性だが、あまりきつい雰囲気ではない。身長は私より少し大きいぐらいだろうか? 私これでも160cmあるんだけど……。


「駄目じゃない、ここは立入禁止の場所よ?」


「す、すみません……。でも貴女はどうしてここへ?」


楊蘭花ヤン ランファよ。私はカメラマンでね、雑誌の写真を撮るために、市に許可をとってここに来てるの」


「あ、えと明山寺凛音です。私高校で新聞部をやってて、その取材で……」


「そうなの。でも危ないから早く帰りなさい。ここは暴漢とかがしょっちゅう出るって聞いてるわ」


「楊さんも危険じゃないですか?」


「私はこれでも武術の心得があるのよ。暴漢10人を纏めてねじ伏せて警察に突き出したことだってあるし」


「ほあー、凄いですね」


「それほどでもないけどね。それじゃ、私は別のとこに行くけど、さっさと帰りなさいな」


ひらひらと手を振って、別の廃墟へと向かっていった楊さん。かっこいいなぁ。……おっといけない。ああ言われたけど、ここまで来て何もせずに帰るのは私の記者魂が納得出来ないわ! 私は廃ビルの中へと戻っていった。




「忠告はしたわよ・・・もし彼に会って死なずにいられるかしら?」






「ボタン、かぁ」


カバーを剥がしてみると、そこには緑色のボタンと赤いボタンがあった。上にはかすれて読みづらいが、『階段照明』の文字。


「あーあ、ハズレかぁ……」


壁の中を調べようにも、鉄板でできているようなので、穴を開けて調べることもできない。


「むぅ、結局都市伝説ってことかぁ」


落胆した私はそのまま壁によりかかり、


ポチッ


ボタンを押してしまった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


何かが動く音。


「な、何!?もしかしてこのボタン!?」


慌てて離れるが、音は続いている。どうも、何かの仕掛けが動いているらしい。どういうこと!?


「って、壁が動いてる・・・!」


不自然なものを感じた踊り場の壁が、ゆっくりと下にスライドしていく。そこには。


"オ カ エ リ ク ダ サ イ"


という文字が、真っ赤な色で書かれていた。


「は?」


呆気にとられてしまう。これだけ大掛かりな仕掛けでありながら、この文字を見せるためだけのものだったとは。


「まあ、普通の人が見れば怖いわよね・・・」


ホラーは嫌いだが、あくまでビックリ系が怖いのであって、こういったタイプは大して怖く感じない。恐らくビルの何らかの意図があったこの仕掛けを、ここを訪れてこの仕掛けに気づいた誰かがイタズラしたのだろう。


「はぁぁぁぁ……くだらない……」


どうしようもなくそう思って、思わず口から漏れた。


「帰ろ……」


なんか気が抜けてしまい、取材もどうでもよくなった。早く帰ってシャワーでも浴びるかな。そう思って階段を降りた。


「・・・あれ?」


一階に降りた時、ふと横を見てみたら、置かれたままの清掃用具が倒れていた。さっきの振動のせいかと思ったのだが。


「扉がある……」


先ほど調べた時には見当たらなかった扉が。倉庫かとも思ったが、だとすればわざわざ清掃用具を扉の前に置く理由はない。


「もしや・・・」


私はある予感を持って扉を開ける。鍵はかかっていなかった。


「・・・・・・ビンゴ!」


扉の先には、暗闇へと続く階段があった。






「うう、ジメジメしてる・・・」


携帯の照明機能を使い、地下を進む私。足元には小さな虫の死骸が転がっており、空気がジメジメしている。


「あ、スイッチだ」


階段を降りたところで、壁面にスイッチがあった。押してみると、暗かった地下が一瞬で明るくなる。


「眩し……」


暗いところを歩いていたせいか、明かりに慣れるまで少しかかる。先を見てみると、長い通路が伸びており、その先には扉が。


「……見つけたわ!」


スクープの予感に私は内心歓喜する。扉の方へと足早に近づいていき、扉の前に立つ。扉には白い紙で張り紙がしてあり、そこには、


"霊感お悩み相談室"


の文字。なんか胡散臭い感じがしたが、どちらにしろ噂が本当だったということだ。私は扉の取っ手に手をかけ、ゆっくりと開く。


「おじゃましまーす……」


扉の隙間から、顔をのぞかせる。部屋の中は薄暗いが、青白い光が灯っている。返事はない。


「誰かいらっしゃいますかー……?」


恐る恐る中へと入る。とりあえず扉は開いたまま。


だが。


バタン!


「え……?」


扉が不自然な速さで閉まる。鍵が掛かっており、必死になって開けようとするが開かない。


「嘘……閉じ込められた!?」


慌てふためく私。その時。


「いらっしゃい」


後ろから声。入った時、人の気配はしなかった。それなのに。今は後ろから人のいる感じ。私は恐怖を感じながらも、ゆっくりと振り返る。


そこには。


「おや。どうやら招かれざる客のようだ」


真っ黒なマントに身を包んだ、髑髏の仮面を被ったナニカ(・・・)がいた。私は心で理解した。アレ(・・)は人間じゃないと。


この日、私は運命を変える出会いをした。この、霊感お悩み相談室、後の心霊悩み相談所で。

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