表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の走行距離(マイレージ)、異世界でも積算中 ~追放された陰キャ長距離ドライバー、最強の"運び屋"として覚醒する~  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/20

第二十章 帰り道

戦場は、静まり返っていた。


黒崎の暴走が止まった今、帝国軍は指揮官を失って混乱している。


「撤退だ! 撤退しろ!」


帝国軍は、散り散りに逃げていった。


「勝った……のか?」


王国軍の兵士たちが、呆然と立ち尽くしていた。


「勝ったんだ。俺たちは、勝ったんだ!」


歓声が、砦中に響き渡った。


誠一は、砦の城壁に座っていた。


夕焼けが、西の空を赤く染めている。


「セイ」


リーネの声がした。


「隣、いい?」


「ああ」


リーネが、誠一の隣に座った。


「どうなったの? あの将軍は」


「俺の中にいる」


「中に?」


「『積載無制限』で、収納した。今は、異次元空間で眠ってる」


「……殺さなかったのね」


「ああ」


誠一は、夕焼けを見つめた。


「殺す必要はなかった。あいつも、俺と同じだったから」


「同じ?」


「疲れて、苦しんで、壊れかけていた。ただ、それを認められなかっただけだ」


「……」


「俺は、あいつが嫌いだった。十八年間、ずっと嫌いだった。でも——」


誠一は、目を閉じた。


「嫌いだからって、見捨てていい理由にはならない。あいつも、助けを求めていたんだ。俺には、それが見えなかった」


「セイ……」


「だから、届けてやるんだ。あいつを、休める場所に。それが、俺にできる最後のことだから」


リーネは、誠一の肩にもたれかかった。


「あなたは、優しい人ね」


「そうでもない」


「そうよ。誰よりも優しい」


二人は、黙って夕焼けを見つめていた。


戦争は終わった。王国は勝った。だが、誠一の心には、複雑な感情が渦巻いていた。


「これから、どうするの?」


リーネが聞いた。


「決まってる」


誠一は立ち上がった。


「運送業を続ける。戦争が終わったら、復興が始まる。物資を運ぶ仕事は、山ほどある」


「そうね」


「帰り荷も探さないとな。この砦から王都へ、何か運べるものはないか」


「相変わらずね」


リーネは笑った。


「でも、そういうところが好きよ」


「……そうか」


誠一も、照れくさそうに笑った。


「さて、帰るか。王都まで、荷物を届けないといけない」


「私も一緒に行くわ」


「危険だぞ」


「構わない。あなたと一緒なら、どこへでも行ける」


二人は、砦の門を出た。


夕焼けの中、王都へ向かって歩き始めた。


エピローグ。


戦争から三ヶ月が経った。


王国は、復興の真っ只中にあった。破壊された村々の再建、帝国との和平交渉、経済の立て直し——やるべきことは、山ほどあった。


その中心で活躍しているのが、カートライト運送ギルドだった。


「今月の売上、過去最高を更新よ」


リーネが、嬉しそうに報告した。


「全国の復興需要に応えて、フル稼働。人員も、倍に増えたわ」


「そうか」


誠一は、窓の外を見た。


王都の大通りには、馬車が行き交っている。その多くが、カートライト運送ギルドの車両だった。


「物流が復活したな」


「ええ。あなたのおかげよ」


「俺だけの力じゃない。みんなで、やったことだ」


誠一は、事務所の壁に貼ってある写真を見た。


ギルドの全員が写っている。リーネ、メルダ、ゴルド、バルト、レオン、ソフィア、トム、ナタリー——そして、新しく加わった仲間たち。


「これが、俺の家族だ」


呟いた。


「日本にいた頃は、家族なんていなかった。友達も、恋人も、いなかった。ただ、一人で走り続けていた」


「……」


「でも、今は違う。仲間がいる。待っている人がいる。帰る場所がある」


誠一は、リーネを見た。


「ありがとう。俺を、この世界に繋いでくれて」


リーネは微笑んだ。


「お礼を言うのは、私の方よ。あなたが来てくれたから、父の夢を叶えられた」


「……」


「これからも、よろしくね。セイ」


「ああ。よろしく、リーネ」


二人は、手を取り合った。


その時、ドアがノックされた。


「ボス、新しい依頼が来てます」


レオンの声だった。


「何だ」


「南の港町から、急ぎの荷物を運んでほしいって。薬草と香辛料。王都まで、三日以内に届けてくれと」


「三日か。俺なら、一日で行ける」


「さすがっす、ボス」


誠一は、立ち上がった。


「さて、仕事だ」


「私も、配車を組むわ」


リーネが、地図を広げた。


「帰り荷も探しておいて。空で走るのは、勿体ないからな」


「分かってるわ」


誠一は、事務所を出た。


外は、晴天だった。青空が、どこまでも広がっている。


「さて、次の配送は——」


誠一は、南へ向かって走り出した。


この世界の物流を、俺が繋ぐ。


届けられない場所なんて、どこにもない。


それが、俺の誇りだ。


【完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ