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陸上での壊血病の話

作者: 高瀬

 異世界にて現代知識を活かす作品でしばし登場する壊血病。結構な割合で船乗りだけがかかる病気、として登場することが多いですが、実際のところは陸上でも見られた病気だよ、という話でも書いてみたり。


 そもそも壊血病のざっくりとした説明としては……


原因:ビタミンCの不足(数日とかではなく月単位での不足)

症状:皮膚や歯肉からの出血し、歯が抜ける。体に力が入らなくなり、やがて動けなくなる。


と言ったところとなり、他の病気への抵抗力も低下するため治療できないとそのまま死に至ります。

 

 船乗りの病気として知られている理由としては、近世(大航海時代)の長期航海中は食料保存技術の問題から食べられる物が限られるために多くの船乗りが壊血病を発症し、長年に渡って恐れられかつその対策が研究されてきたからでしょう。

対策としてはビタミンCを摂取するのが一番ということで柑橘類や酢漬けキャベツなどを食べることが予防となり、国や地域によっては伝統的な食事のおかげで壊血病とは縁が薄い国(地域)もありました。


 で、そんな壊血病ですが、原因がビタミンC不足ということで、現代でも極端な偏食をしてビタミンCが欠乏した状態を長く続ければ発症します。

発症するまでに時間がかかる都合、何も食べていない場合は発症するより先に餓死してしまいます。

なので餓死しないように栄養素が偏る食事を一定期間続けているというのが発症する前提条件となります。

過去の陸上においてもこの条件を満たしてビタミンC不足になれば発症しました。


 具体的に記録に残っているのは都市部の貧困層の話が多く、例えば十八世紀頃のロンドン貧困層の調査結果とかにも壊血病の名前が出てきます。

貧困層にとって柑橘類や新鮮な野菜といったものは値段が高くて口にすることができず、安価で粗悪な食事が中心となった結果、栄養素が偏って壊血病が発症する、という流れだったようです。

結構見落とされがちな気もしますが、近代以前の世界において、新鮮な野菜や果物というのはいつでも誰でも食べられるという物ではありませんでした。

近代イギリスのお茶会ではキュウリのサンドイッチを提供できることがステイタスだったと聞くと現代の感覚からは不思議に思いますが、そのくらい現代日本では身近な野菜であっても時代・地域によっては大変貴重ということがありました。

当然、貧困層以外でも不作や戦争によって困窮して食事内容が偏れば発症することがあり、壊血病というのは決して海上の船員に限った病気ではなかったことがわかります。


 とまあ陸上で壊血病が発生する理由の話だったわけですが、異世界物の作品なんかでも食料事情の悪いスラム街というのをそれなりに見かけます。そういうところで壊血病が発症するというのは自然なことだと思うのですが、いかがでしょうか?

陸上の話であっても壊血病出しても良いんじゃないかなと思うのと、別に船乗り限定の病気ではないのに判を押したように船乗りの病気としてばかり出てくるのも妙に思ってつい書いてしまいました。

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