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チビーエルフ②


 エルジュがギルドマスターのランブルに向けて勿体付けた言い方をする。

 ランブルの娘とエルジュは幼馴染。

 その娘ジュリアンテには彼氏がいて、娘の将来にエルジュの存在が少々煩わしく思うランブルも、エルジュに対して意地悪な物言いをした。



「ジュリからレオリウスくんを取らないでやってくれぬか」



 客足の少ない時間帯。店には今ランブルとエルジュの姿しかなかった。

 グラス磨きの手を止めたランブルは冷めた物言いでエルジュを嗜める。


 ランブルはストレートに本音を伝えてきた。

 どれだけエルジュがはぐらかそうとも娘を思う気持ちは親として当然ある。

 娘の幸せを思えば、冒険者としての独立が叶わぬ無能ぶりのエルジュを遠ざけたいと考えるのは常識の範疇だ。しかしエルジュはケロリとした顔で反論する。

 


「ジュリアンテは幼馴染だけど、レオはオレの親友だよ! それを取るなと言われても困るんだけど」


 長居付き合いだ。当然関係は知っている。

 ランブルはポカンと開いた口が塞がらないといった顔をした。


「あ、いや私はだね……」ランブルは目を細めてエルジュをじっと見据えた。


 ランブルはエルジュをあまり邪険にすれば、交際相手のレオリウスが娘から遠ざかることを知っていた。だからエルジュにそれを言われると強く言い返せなくなるのだ。


 その様子を見越したうえでエルジュは声を大にする。


「それにランブルさんの言うとおりにするなら、レオの姉ちゃんがオレのことを好いてるから、そこに行ったらオレは家族になっちゃうわけだよ。それをランブルさんが嫌っているみたいだとアーチェお嬢に伝えてくればいいんですかね?」


「いっ……?!!」ランブルは一気に青ざめる。


「わかりました! ランブルさんがジュリをどれだけ愛してるか伝えれば満足なんですね。オレは夢を抱かずに人形のように生きればいいと」


 後半はむくれた口調であるのが感じられた。

 プイっと横を向き、ランブルには目もくれずカウンターから遠ざかるエルジュが出口に向かおうとすると。


「ま、待ってくれ! 私はなにもそこまでキミを嫌ってなどいないんだ! わかった、わかったから。機嫌を直してくれ、エルジュくん! 紹介はさせてもらうけど冒険者がキミを受け入れてくれるかまでは責任をもてないからね?」


 冷汗をかき、血相を変え、ランブルが大慌てで前言を撤回した。

 エルジュはピタリと足を止めて踵を返す。

 にんまりと顔をほころばせる。顔を紅潮させて。

 駆け引きに勝ったと言わんばかりに。


「それで充分です。やったぁ、ありがとう!」


 これまでも、そういう手口で酒場に出入りしてきたことが窺える。

 冒険者に相応しくないなら毎日門前払いでも不思議ではないのに、5年も交流を続けてこられたのはきちんと相手の弱点を踏まえているからだ。


 抜け目のないエルジュに、ランブルはやれやれという表情で冒険者台帳に目を通していく。


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