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チビーエルフ①


「ねえねえ、聞いてよ! ランブルさん!」

「悪いけどな、ここは冒険者の酒場なんだよ。冒険ができる人たちのな」

「そうじゃなくて、オレすごいことできるようになったんだよ!」


 そういいながら、カウンター越しのランブルに詰め寄るのはミニサイズのエルフの少年。


「すごいこと? あまりのちびっこさにスライムを爆笑させたのか?」

「そんなんじゃないよ。やっと魔法を覚えたんだよ!」

「キミみたいな、チビーエルフが魔法をねぇ?」

「これがすごいんだってば。やって見せるから冒険者を紹介してくれよ!」


 ランブルは目を細めて彼を見た。


「エルジュ、境遇は気の毒だが。あんな無能な魔法陣じゃ誰の助けにもならないと何度言えばわかってくれるんだ? 冒険者なんて早く諦めな。その容姿を武器に可愛がってくれるお金持ちに甘えて暮らせばいいものを」


 酒場のオーナーであるランブルはグラスを布で拭き取りながら、話半分という感じでエルジュの相手を適当にする。


 エルジュの身長はスライムよりも低く、体も赤子のように小さかった。

 冒険者に興味があるエルジュは魔法を覚えたと言っては冒険者ギルド兼酒場に通い詰めるエルフ族の男の子だ。


「お願いします、ランブルさん! 冒険に出かけるために装備を買いたいんだよ。だからお金が必要だから魔法を売って稼ぎたいんだよ」


 カウンターの手前で両手をこすり合わせてエルジュが懸命に懇願する。


「キミがそう言って、うちに来る冒険者にどれだけ笑われてきたか自分で分かっているはずだ。そうして5年が過ぎたんだぞ。みんな、キミのホラ話には飽き飽きしてるんだよ。気の毒だけどそろそろ身の程をわきまえたらどうだね?」


「冒険者がダメならジュリアンテでもいいんだ。いつ戻ってきますか?」


「うちの娘も年頃だ。きみとは幼馴染だから近寄るなとまでは言わないけど。いつまでも子供じゃないんだよ。今日はレオリウスくんとデートの約束だったはずだ」


「それじゃ、レオの家にいってるんですね?」

「ああ、そうだよ。……だけどそろそろ二人をそっとしてやってくれないか」


「そっとするとはどういうこと?」


 エルジュは澄まし顔で首を右に傾げて見せる。


「どういうことかなぁ?」


 言って今度は首を左に傾げるのだ。

 デートの意味がわからないわけではないだろうに。

 少し意地悪な物言いでランブルを困らせようととぼけるのだ。



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