異世界
「そのスキルでせっかくこっちに戻れたのに? 俺をさらったら向こうの世界へ逆戻りじゃないの?」
「それが正しい思考回路だ。でも俺たちは生き返れる訳じゃないから。戻ってきても能力の一時的な効果に過ぎないんだ」
それって、つまりどういうこと?
「一時的な効果とは、どうなってるの?」
「きみ、RPGゲームは知ってるか?」
それは、ロールプレイングゲーム・ゲームという解釈で宜しいですか?
などのゲームってことだよね、お兄さんも慌てているんだよな。そこは突っ込まないであげる。
「はい、それは大好きです。ゲーマーですから」
「お。バフやデバフも得られる効果は一定時間だよね、それと同じってことさ」
うわあ、まじか。まじか、まじか、まじかあぁぁ!!!
異常気象まじかぁ!!!
異常気象万歳っ! 胸躍るワードだけど。万歳とか喜んどる場合じゃないんだわ。
子供を誘拐したら、転移できる能力者??
てことは、こっちに来る条件として彼らは……いま、そちらでも誘拐犯?
「うっそでしょ──っっ!! 誘拐重ね過ぎじゃないですかぁ!?」
スキルなんだから、割と乱用してるよね? するっきゃないよね?
異世界スキルって……やっぱり当たり外れが激しいのね。
「しっィィ──っ! 声がでかいよ、見つかったら投獄されますよ!」
「と、投獄はあなたたちだけの話でしょ。なんで俺まで巻き込まれるんですか?」
もうすでに巻き込まれとるけどね。これって巻き込まれ転生?
「そ、それはごめん。それよりサルッチ、可愛い子の自称は「ボク」でなければ犯罪ですよ! 気を付けるのです!」
え、え、なにそのファンタジー絶対あるあるな縛りは。
「あ、あの。ぼ、ボク、死んじゃったのですか?」
「いいえ。サルッチは転移になるね」
良かった、良かった、良かったぁぁぁぁぁあああっ!!!
じゃあ、なんか目的を果たさなければ戻してもらえない感じ──
「──感じ、でしょうか?」
「こちらでの誘拐は致し方なくでしたが、生前の世界に来て対策を練っていました。もう一度、このユーシャルズ・スリープに戻るには誘拐をするほかはなくて……きみに何かをしてもらおうといった趣旨ではなかったんだ。それについてはホントに申し訳ない」
あなたたちの転移スキルの犠牲になったってことだね。
「効果は一時的なのではないのですか。自動的に戻れないの?」
彼、オトジの視線が泳いだ。嫌な予感が脳裏を駆け巡る。
「自動でも戻れるけど。それだと……守りたかった子が消費物として消え去ってしまうんだ。俺たち転生者はスキルだけで魔法使いのようなMPという魔力概念がないんだ」
「魔法使いが居るのか!? 魔力がない代わりに消費する代償が必要ってこと?」




