エルフ
モンタナには確認をしておきたいことがあったので聞く。
「モンタナさん、お聞きしたいのですが?」
「はい、どうぞ」
「ギルドに於ける不正が冒険者にあった場合、追放で国を追われる程度で許されるのですか? そんな怖い神様が、職を辞して他国へ引っ越すだけでいいと?」
「ええ、そうですけど……人間にとってそれほど恐ろしい現実はないのです。それにサルッチさんはひとつ勘違いをされていますね」
勘違いをしていますか、俺。
「どの辺ですか?」
「人間の国を追放されて、他種族の、たとえば……鬼蛮族の国などに放り込まれます。食べられるか、生涯にわたり奴隷ですよ。きっと」
「うわ……まじかっ!?」
逆奴隷は差別にならないのかよ。
オーガも亜人と呼ばれる奴らだが、いいのか。それは辛いな。
「登録時にうその申請があったりすると「妖精さん」でも罰をうけるのですか?」
「え? 妖精王の国の妖精さんは冒険者なんて過酷な労働はなさいません。鬼蛮族と人間は古来から抗争が絶えないのでこんな人間の冒険者ギルドを訪れる方はいませんし」
そうなんだな。いろんな種族が入り乱れた世界との先入観があったが。
オーガと人間は対立国家なんだ。
オトジの顔をじっと見て。
「なあ、オトジ……? オーガと人間と妖精。その他の種族はあるの?」
「そうだな。あとはドワーフとモンケポという尻尾が生えた小人族が建国をしているよ。他にも種族はたくさん居るけど建国していないので王がいないから差別も絶えなかったりする」
「他にもいるのか。差別は今でも? 妖精王は差別を嫌うんでしょ?」
「妖精王は妖精族だけしかお守りになれないんだよ。お目覚めにならないだけで他の種族神はべつにいらっしゃるのだからな」
ああ。そういうことなのか。
いまは妖精族が優位ってだけなのだな。
人間たちは肩身の狭い思いをしているのか。
だから隠れていたんだな──あの衛兵のような者たちから。
今日、取り締まりの現場を見た。
そのことによって連行されていた人たちだったのか。
街に入った時の様子を思い出して、オトジに尋ねる。
「ところで、エルフは建国してないの?」
「エルフって……。それこそ亜人として悪党どもに差別にあっていた者たちじゃないか、オレはまだ出会ったことはないが」
オトジのつぶやきにモンタナが。
「エルフさんも、もとは妖精族に当たるのよ。背中に小さな薄羽があるのが末裔エルフさんで、その子孫には2種類いるのよ。薄羽がなくて魔法力に特化した長身の方はダークエルフと呼ばれる。そのどちらでもなく耳が少し人より長く突き出ているだけの可愛らしいタイプの方が、ハーフエルフと呼ばれています」
オトジはモンタナを見直したと言わんばかりに見た。
「モンタナ、やけに詳しいな」
「わたしも、一応ギルドの人間ですから妖精王の召喚に応じてから、粗相がないように勉強したのよ!」
彼女は得意げに、オトジに甘える様に微笑みかけた。
「ダークエルフとハーフエルフが妖精族の子孫なんだな。あの容姿シビれるよな」




