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剣士


 妖精族の神様が、冒険者たちを通して人間の動向を見張っているわけだ。


「それなら心配はないですよ。ボクほんとにありのままを伝えていますから」

「サルッチさん。年齢は本当に二十歳なのですね?」


 どんだけ疑いの目を向けたら気が済むんだよ。

 確かに身長は子供並みの140でキッズファッションしてるよ。

 気に入ってるし似合っているから仕方ないだろ。

 もういい加減、頭にきた。


「お疑いなら、玄関口にいる冒険者のオトジさんに聞いてくださいよ!」


 指を差しオトジの情報を報せると、なぜだか彼女はビクっと驚いた。

 顔を強張らせて玄関口に視線を移した。


「あっ! オトジさんじゃないですか! え、え、お知り合いなのですか?」


 彼女の視線は泳ぐように俺とオトジの顔を往復する。

 彼女は目を白黒させる。なぜそんなに態度が変わるんだ。


「オトジとはちょっとした出会いがあって、一緒に住むことになったもので」

「まあ、それならそうと早く仰ってくだされば……」

「はぁ?」


 仰ってって言ったの? 随分と言葉の格上げが見られるが。

 オトジってそんなに格上の冒険者なのか。


「登録済みの冒険者の紹介者がいれば、ほぼ無条件ですのに」

「あ、そうだったんですね! よく知らなくてごめんなさい」


 紹介者制度があったんだな。一人で背伸びしすぎたかな。

 後頭部を搔きながら俺はそうとは知らずにオトジを遠ざけていた。

 でもこの世界の情報をいくらか知ることができたから、良しとする。


 照れながら、オトジを手招きで呼び寄せた。

 彼はずっと俺を案じて見ていてくれた。振り向くとすぐに目が合った。

 そして慌てることもなく、テクテクとこちらに向かってくる。


「やあ、モンタナ! すまないね、彼が一人で登録をしたいというので。彼が大人なのは本当だよ。彼も冒険者を希望しているんだ。よろしく頼むよ」


 彼が手短に紹介をすると彼女の表情がぐんと和らいだ。


 遠くに居ながら会話の内容を見透かしたように助言をいれてくれた。

 きっと俺が子供扱いされて、俺が反発するのを想定していたのだな。


 オトジが傍に来て、受付嬢のモンタナさんに挨拶をしてくれた。

 一気に信頼がついて、うまくことが運びそうな雰囲気になる。


「お知り合いだったんですね? わかりました。では名前、年齢、お住まいは間違いないですね。個人の記録はこれで終わりです」


 ふう。何とか無事に冒険者に成れるみたいで、ありがたい。


「個人の? 他になにかあるの?」

「ええ。職種を選んで決めて頂くのです。オトジさんからお聞きになって当ギルドに足を運ばれたのですよね?」


 ──ああ、そうだった。ジョブ選びだな、剣士、剣士。


「剣士がいいので、それでお願いします!」

「剣士ですか……その小さなお身体で」

「だめなんですか? 身長制限でもあるのですか?」

「いえいえ、失礼しました。お受けいたします」


 何なんだ、いちいち人を小馬鹿にする言い方は。本当に失礼だよ。

 ムスっとしているとオトジが言った。


「君の華奢な体つきを彼女なりに心配してんだよ。許してやってくれ」

「まぁそういうことなら」


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