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激レア


 魔法陣の効能は魔法力の補助、時には火力が極限まで上乗せされる暴走など。


「身をもって体験されたのに、うそつきですか? 仕方ない、ほかの冒険者を当たるとするか。いまの薬草2個だって、ナルケルさんの回復に使った分とこれはプレゼントしますから、薬草の返却はナシで」


 エルジュはがっかりとした声で手にしていた『空想種(ソラシド)』をテーブルの上に置く。

 無論アイテム化した魔法陣のことだ。

 そしてナルケルを恨めしそうに見つめ、震えた弱弱しい声で、


「オレを認めたくないなら、あなたとは組まないだけです。ご協力には感謝します。ではお食事を楽しんでください。オレはフラれたんだから仕方がない……」


 エルジュは唇を嚙みしめた。悔し気な声で床に視線を落とす。

 ため息を吐いて呼吸を整えると、そのまま彼に背を向けて部屋を出て行こうとする。

 目で追うナルケルは、ランブルと似たようなセリフを吐く。


「ま、待ってくれ! なにも毛嫌いしてるなんて言ってないだろ? 信じるよ、すげえじゃねえかエルジュよ!」


 後ろ髪を引く彼の声にエルジュは足を止め踵を返した。

 ナルケルの前に戻り、にんまりと顔をほころばせる。


「しばらくは誰にも秘密にして、ナルケルさんにだけ格安で提供する」

「お、おお! ど、どうしてだ?」

「レベリングの面倒よろしくです。戦えないから組んで欲しいかったんだ」

「な、なるほど。悪くない提案だ、気に入った! エルジュお前とPT契約を結んでやるよ。たまに冒険に連れ出してやる。俺には危険な任務もあるから、それでいいか?」


 エルジュは待っていましたと言わぬばかりに満面の笑みで頷いた。


「ヒーラーと魔法使いと組まなくても弱めの魔物でサクサクいけるよね! 道具は誰にでも使えるから金策にしてもいいよ。ナルケルさんならもっと上級者も相手にできるだろうし」


「それは楽しみなことだが。俺も魔法使いと付き合いがあるから聞いておきたい」

「なんでしょう?」

「エルジュの作った魔道具の術式は企業秘密なんだろうが、上手の魔法使いは道具自体に新たに効能を上書きする奴もいる。パクられる心配はないのか?」

「それなら御心配にはおよびません。アーティファクト化だけではないからです」


「ほう、なにか対策を施したのか?」


「対策……そうですね。【空想種(ソラシド)】それがオレのスキルで、ビルドの過程で練りこまれた情報は暗号化されたあと消滅するのです。辿られることも解読される心配もないです。『緑眼の巫女』の加護によるものだから他人に上書きされる心配はするだけ無駄なのです」


「緑眼って、もしや風の谷の一族と魔法契約を!? 精霊系統には滅多にお目にかかれないのに、お近づきになっちまってるなんて。……げ、激レアじゃねえかよ、おい!」


 戦士ナルケルの巌のような顔が商売人のようにほころんだ。


 魔法陣の魔道具化。それの暴走化を含む絶大効果。消費の大きな削減効果。

 どれをとっても冒険者にはおいしすぎる存在。

 戦士ナルケルの瞳に思わず王宮生活のような夢物語が映りこむ。

 だれも引いたことのない超激レアカードを引き当てた気分でいっぱいになった。



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