真・魔道具
「いったいなにをしようと言うんだ?」
「いま薬草1個で全回復しましたね? それはつまり瀕死でも同じく全回復ということです」
「まじか! まじで言うとんのか、それ!?」
「おおまじです! あなたは薬草1個で全快だよ。だけどオレ弱いから冒険についていけないんだ。丸腰だもん」
「そ、そうだよな。考えようによっちゃ庇いながらレベリングの世話をやいてやってもいいんだが」
「そうなったら願ったり叶ったりだよ。でもいまは、見ててね。もう回復はできないでしょ」
エルジュがいうと、ナルケルは確かに、と頷いた。
ナルケルはさらにここから何が起きるのかと胸を熱くした。
エルジュが息を深く吸うと再び唱えだした。
「盟約の主【緑眼の巫女】の恩恵宿りし魔法陣……わが意に従い魔法道具と成り、来たれ!エルジュの名のもとへ『空想種』っ!!」
「なんだ、なんだ?」
エルジュの詠唱とともに魔法陣がみるみるうちに縮小した。
魔法陣ごと緑色の光の螺旋となってエルジュの手の中に納まってしまった。
エルジュの手のひらに、小さな薬のカプセルがポンと残った。
「なんだそれは? 丸薬か? それを飲めばまた大きく回復するのか?」
「回復はするんだけど飲むわけじゃない。再び足元に投げればさっきの魔法陣が一度だけ展開するんだ。使い方は今と同じで触れるだけです。しかも一定時間展開してるから、PTメンバーも恩恵に与れるよ! どうですか? 元手薬草1個で中級PT全員ほぼ回復可能なんて」
ナルケルは目を白黒させながら、もしかしてと呟いた。
「アーティファクトって言ったよな? もしかしてお前、魔法陣の効果を魔道具化できるのか?」
「ピンポーン! 大正解だよ! 魔法陣を道具に変換して、だれもが魔法陣を使用できるという魔法具に変換したんです。ただ薬草1個だと500程度の回復になったけど3個入れたら1500になるかはまだ不明なんだけど、ほぼ重複はまちがいないよ」
「ま、ま、ま、まじか! どういう理屈なんだよ、おい! 説明しろそこ。危険はないんだろうな!」
危険がないことなどその身をもって体験したのに、説明を迫るナルケル。
「どういうって……ベテランなのに知らないの? 魔法陣の役割を?」
「なに!? ま、まさか!? お前の魔法って暴走魔法陣なのか!? しかも……」
しかも、陣の中で効果の合成もできる上に、アイテム化まで見せられたのだ。
驚くなというほうが無理な状況だった。