表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第3話:沈黙なき召集(コード・サルベイジα13)

 ——記録時間:UTC残暦Δ-2042年、43日目。

 ——通信分類:最高機密/連合監視非通知モード

 ——観測拠点:クロノス=リンク社・軌道端末群 No.07 “スレッドガイア”


 


「……確認されたのか」


「はい。JDG-013のシグナル、確度92%。位置座標は惑星《デトリス=ライン》、南緯Eバンド域」


「随分と……面倒な場所だな」


 


 クロノス=リンク社、戦術戦略局。通信室の奥、青白いホログラムに照らされた男の目が、僅かに揺れた。


「処分済みのはずだぞ。コードX搭載個体……あの《断罪機構》が」


「おそらくは自律制御下での再起動。断片的ですが、機体AIの応答ログも検出されています」


「……再起動“した”んじゃない。“された”んだ。誰かが、火に息を吹きかけた」


 


 数秒の沈黙。次の瞬間、命令が下される。


 


「即時対応。機密レベルで降下部隊を組成しろ。表向きには“傭兵依頼コード”を発行だ」


 


 


 ——その命令は、他の企業にもほぼ同時に届いていた。


 


 ◆《メルカバ重機工業》は重装型機体を中心とした“回収支援部隊”を準備。


 ◆《エン=フォージ財団》はAI型傭兵ユニットを含む混成部隊を構築。


 ◆《コードパージ部隊(R.E.M.)》には《対・旧断罪機構》専用プロト機の実戦運用許可が下りる。


 


 そして、全企業が一斉に、辺境を漂う無数のフリー傭兵たちへ《共通依頼コード》を発信した。


 


任務名:【サルベイジ任務 α13】

概要:惑星デトリス=ラインにおける旧世代兵器回収/脅威排除

報酬:基礎契約額+成果報酬(企業共通規定)

備考:限定期間内任務。帰属義務なし。参加資格自由

ーー「全ての傭兵たちへ」

 


 誘い文句は、常に同じだった。

 この依頼に応じれば、生きて帰れば、報酬もパーツも名誉も手に入る。

 だが、応じた者の多くは知っている。“αコード”がついた依頼の先には、碌なものがないと。


 


 


 ◆◆◆


 


 その頃。デトリス=ライン。アッシュフォールの街角。


「…それで、今企業がどう動いているか探って欲しいと……簡単に言ってくれる…」


「やはり難しいか…」


「まぁ探れるだけ探ってみるよ、だけど今回は相手が相手だからな…、いつもより弾んでおくれよ?」


 人通りの少ないこの細道は内緒話をするには最適だ、無論誰が聞いてるかわからないから警戒は怠らないが。


 間違いないなく企業は動き出す、それだけあの機体(オーバーレッド)は特殊なんだ。


 現在、オーバーレッドはバンド域にあるもう一つの格納庫に隠してあるが、見つかるのも時間の問題だ。


 情報屋と別れ街の酒場、その場にいる傭兵が持つ端末に同時に通知が入る。


 企業からの共通任務だ、だが重要なのはそこではない。


「……α13」



 コード“13”は、かつての彼の機体番号──《JDG-013》。

 それは、ただの偶然か。あるいは、誰かが意図的にその番号を使用しているのか。


 背後で傭兵たちがざわつく。誰もが新たな戦争の匂いに気づいている。


 スレッドは静かにコートの襟を立て、通りを去った。

 灰の上に、重い足音だけを残して。


 


 火種は、すでに各地に撒かれた。

 問題は、それに誰が火を点けるかだけだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ