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憧れ、という言葉がある。

そしてそれは大抵、自分ではない他の誰かに向けられるものだ。


この世界に跋扈する魔物を勇ましく撃退する戦士であったり、数多の人望を集める立派な統治者であったり、学識でその名を轟かせる研究者であったり。


その人ごとに抱く憧れは違っていて、人の数だけ憧れは存在する。

けれども、その中で一際人々の憧れを集める者達がいる。



魔法使い ― 物理法則を越えた力を行使し、その力で世界と人々に寄与する者。



決して簡単になれるものではなくて、その力を自らのものとするための道には才能・技術・運といった様々な要素が複雑に絡み合っている。


だけど、だからこそ多くの人が目を奪われる。

叶う望みが少ないからこそ、自分もそうなりたいと夢を見る。


ゆえに魔法使いはこの世界で最も多くの憧れを抱かれる存在だ。


そして、この世界の魔法使いの最上位に位置する一握りの天才達。

彼ら彼女らを人々は今日も見上げている。


見上げている、というのは比喩の話ではない。

実際に魔法使い達は人々から見上げられている。



彼ら彼女らは空を飛ぶ。


人が飛ぶことなどありえないはずの世界で、嘘偽りなく空を駆けていく。

その姿に子供は無邪気な憧憬の視線を向け、大人は自分が選び得なかった道に想いを馳せる。


そんな異次元の存在達の中に一人の少女がいた。

鮮やかな銀色の髪を風に靡かせ、遥か高い空と同じ澄んだ水色の瞳で世界を捉えながら颯爽と飛んでいく。

その背中に溌溂とした活気を宿し、楽し気な表情を浮かべて愛馬を操る。


彼女の名はミリナ=エリステラ。

この国で最も名高い国立学院の魔法科を飛び級で卒業し、世界でも指折りの魔法使いとなった少女。


そんな彼女は今日も空を飛ぶ。

けれど他の魔法使いと違って、人々の手の届かない場所ではなく、人々の近くで飛び続ける。


やがて彼女は地上に降り立ち、その手に小さな荷物を抱えて一軒の家をノックする。

家人が出てくればその可憐な笑顔を咲かせて―


「こんにちは、お荷物をお届けに来ました!」


この国きっての魔法使い・ミリナ=リエステラの仕事は、運送屋だ。

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