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16話 原作主人公視点


 真壁さんは、またしてもボクを救ってくれた。惚れ薬による抗いがたい誘惑を上回るほどのボクを守りたいと思う気持ち。……彼女は、僕の目指すべき姿だ。


 あの後研究所内の与えられた自室でずっと考えていた。……みんなの心を守るための方法を。確かに今の僕が正体を明かしたところで、誰も理解してくれない。『代償』によってみんなボクが剣崎剣だと認知出来ないのだ。そんな状態で自分の主張を続けていてもみんなに迷惑をかけることになってしまう。


 だから、こうして正体を明かさず人から隠れて生きていた方がいいと思い今まで生きてきたし、これからもそうして生きていこうと考えた。……でも、それは浅はかな考えだったことに気づかされた。


 大切な人が、突然いなくなってしまう。……それは、言葉にできないほどつらいはずだ。


 今まで築いてきた関係が絶たれてしまう事の恐ろしさは、並大抵のものではない。ボクは、身をもってその恐ろしさを理解した。


 ……なら、ボクはボクの秘密を、真実を、何としてでも伝えるべきだったんだ。

 

 『代償』によって、僕を認知してもらえなくなった。だから、みんなから理解してもらえなくて幼い心がボロボロになってしまった。


 『代償』によって、精神が幼くなってしまった。だから、頭が働かなくて解決策が思い浮かばなかった。


 ……そんなのは言い訳にならない。心が弱くなってしまったとしても、その心を奮い立たせて『自分は大丈夫。いつか戻るね』という事を何とかしてみんなに伝えなければならなかったんだ。


 何にも守れてないじゃないか。……自分の未熟さで、大切な人を傷つけたままにしようとしていたんだ。そのことを考えると、胸が張り裂けそうになる。みんなが傷つかないよう、みんなを守ると決めていたのに。


 このままじゃいけない。ボクの事を理解してもらうためには、本当の事を伝えなければ。なんとかして、ボクが無事だという事を伝えなくては。……その為にも、いい方法が無いか考えなければ。


 そう考え、必死に頭を回転させた。だけど、結局何もいい案が思い浮かばない。とりあえずやれるだけの事をやったと思いたいが……ダメだ、知能が低下しているのもあって頭が働かない。


 って、それじゃダメだ。『代償』なんかにこれ以上いいようにされてたまるか。たとえ見た目が幼くなったとしても、知能が低下したとしても、色々なものを無くしていたとしても。今まで生きてきた『記憶』を失った訳ではないんだ。


 思い出せ、過去の記憶を。その中にきっと今回の問題に対する解決策があるはずだ。


 今まで多くの体験をしてきた。願いに対する体験に、能力者に関する体験。学園での体験に、そこでの個性的な子達との体験。それらはとても濃密で、まとめたら一つの物語にできそうなほど濃いものだった。


 また、体験してきたのは濃密な出来事だけではない。何気ない友達との会話、ほんのりとした家族との団らん。それら以外にも、沢山の素敵な体験。


 ボクはその体験を、何一つ忘れてない。それらはきっと、今のボクを形成する上で大切な思い出たちだ。それらすべてが自分を証明する要素になっている。


 ボクは、剣崎剣だ。無力な少女なんかじゃない。それを証明しなくちゃいけないんだ。これからもみんなを守っていくためにも。そして、今まで通りの僕でいるためにも。


  今までの記憶をさかのぼり、様々な体験を思い出す。そして、現状打破のための策をなんとか思いついた。


 ……『代償』の裏をかいて、『剣崎剣』が無事であることをみんなに伝えればいいのだ。


 ボクはいままで、能力者と数多く戦ってきた。


 その中には普通では倒すのが難しい、厄介な能力を持つ奴らも何人か存在した。


 真正面から戦いを挑んでも、まともこちらの攻撃が通らず一方的にやられてしまう。


 でも、そんな奴ら相手でも何とか倒す事が出来た。一見無敵と思われる能力でも、『裏』というものが存在したのだ。


 例えば『気体化』の能力者。彼は自信の体を気体に変化させ、ほとんどの攻撃を無効化してきた。


 絶体絶命の状況。しかし、気体化は無敵の能力ではない。その事に気付いた僕は、掃除機の吸引力を利用して奴を閉じ込めて勝利した。


『非攻撃対象』の能力者を相手した時だってそうだ。


 ボクは奴を攻撃対象として見なすことが出来ず、防戦一方の戦いを強いられた。


 でも、『奴の服なら攻撃対象に出来る』事に気付き、服ごと彼を吹き飛ばすことで、なんとか勝利をつかむことが出来た。


 そう、『最強のように思えた能力』だって裏をかくことで攻略することが出来たんだ。


 だから、今回だってその方法を使えばいい。『ボクが剣崎剣だと認識されなくなる代償』の裏をかいて、『剣崎剣は無事だ』という事をみんなに伝えればいいのだ。


 ……なら正体を明かさずに会って、剣崎剣が無事だと言うことを伝える?


 いや、駄目だ。それじゃ変な子供の戯れ言だと思われ、まともに取り合ってもらえない。


 信憑性が無ければ、信じてもらえない。だから、『剣崎剣』として自分の無事を伝えて信じてもらうしかない。


 しかし、今は代償によってボクが剣崎剣だと認識されない状態。つまり、直接的に剣崎剣として自分の無事を伝えることはできない。


 ……なら、間接的な手段を使うしかない。代償による『認識の阻害』の発動条件を満たさないように、間接的な方法『剣崎剣が無事だ』ということを伝えればいいのだ。


 なら、一体どうやって……? そんな事を考えていると、ふとある考えにたどり着く。


 「手紙」だ。


 それなら、直接会わなくても『剣崎剣』の無事を間接的に伝えることが出来る。もし、『認識の阻害』の発動条件が『直接対面する』ならば、手紙など間接的な手段を取れば免れることが出来るはず。


 それに、不審な少女の言葉より剣崎剣が書いた可能性のある手紙の方が、圧倒的に信憑性が高いはずだ。


 そう結論付け、ボクは早速手紙を書くことにした。


 ……どういう内容にすればいいだろうか? 今まで起こったことを掻い摘んで説明しようかと思ったが、それじゃあ情報量が多すぎて逆に怪しまれてしまうだろう。


 要点をまとめる必要がある。まずは、『剣崎剣が無事だ』という事を認識させることができればいいのだ。それから、やはり『代償』の事も書いた方が良いだろうか。だけどその場合、代償を負ってしまった事を心配されてしまわないだろうか? しかし、それを伝えなければ誠実ではない。


 ……やっぱり代償のことは書くか。確かに心配はかけるかもしれないけど、そっちの方が確実だ。


 心配させないためにも、簡潔に自分の状況を説明してボクが無事であることを伝えよう。そして、もう少ししたら別人として異能管理学園の生徒になることを。さらに、姿は変わってしまったけれど『望みを持って生きているから安心して欲しい』ということもしっかりと伝えよう。


 そう考え、自分の状態を正直に書いた手紙を書き上げることにした。


 ……これで大丈夫かな? 少し不安に思いつつも、ボクは手紙を書き上げた。後はこれを人数分用意してみんなに送ればいいだろう。みんなどんな反応をするのかな。希望を持たせることが出来ればいいんだけれど。



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