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続きです。
もう部屋にこもっているのにもほとんど意味がないので、今は中央の部屋でのんびりとした時間を過ごしている。
真ん中にある部屋は、他の寝室とはだいぶ様子が違っていて、生活感というか、住んでいる人のこだわりが垣間見えた。
この街では入手が大変だったろうに、部屋の真ん中に堂々と居座るのは木製のテーブル。
丁度四人、いや・・・・・・お誕生席とかも含めれば六人着くことが出来るまさしく家庭用と言ったようなテーブルだ。
そこには学校の理科室で使われるような背の低い椅子が並べられている。
その個数は丁度都合良く四つで、俺が加わったことで全ての席が埋まるようになった。
天井からはスズランを模した小さな照明がぶら下がっており、原理は分からないが柔らかな光で部屋を照らしている。
鉄の冷たい印象を極力排除するような、そういった意図に基づいているのが感じられた。
部屋は広々としていて、広すぎるということもないが少なくとも窮屈さとは縁遠いものだった。
さらには食器棚と台所も設置されていて、ここまで文化的な家はここに来て初めてお目にかかるレベルだ。
「いや・・・・・・この部屋、すごいな」
背の低い椅子に腰掛けて、熱心に裁縫をするフォスタに言葉をかける。
ウルルとフルルは床でじゃれあっているのでどの席を選ぶも自由だったが、真正面に座るのも隣に座るのも違う気がして、対角線上に位置する椅子に腰を落とした。
「この部屋は・・・・・・というかこの建物はそれこそまだこの街にセカンドって名前が付く前に建てられたものだから・・・・・・たぶんその頃は今より色々余裕があったんだと思う。後は・・・・・・まぁ住んでた人のこだわり、かな」
そう語るフォスタはどこか誇らしげで、彼女自身もこの場所が気に入っているらしかった。
続きます。