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─手紙と回送─

 ◇

 その手紙は厳重に保管されていた。

 その文字は美しかった。連ねた単語はともかくとして、その筆跡は高度な教育を受けてきた者のそれでおいそれとお目に掛れるものではない。

 数十枚と連なるものの何枚かはインクが滲んでいる。

 私は見てはいけないものを見たと思う心とそれを覗きたいという相反する心を抑え込もうと努力する。

 部屋の中は静まりかえっている。手紙を書いた当人もくる気配はない。

 見てしまおう。

 これを知ればひどく怒るかもしれないが、私は彼女の心の内を知りたかった。

 恭しく椅子に腰をかけ、保管されていた箱に手を合わせる。



 ■


 アナタに手紙を書くにあたって礼儀なんて別に必要ないわよね

 もう私も平民になり下がったわけだし

 世間体ではアナタは私の旦那様になったわけだけどお父様が私の生活費をアナタに託したことを私は知っているの

 十分遊んで暮らしていけるだけあるんでしょう

 アナタの家族にも幾らばかりか差し出したそうね

 よく逃げないわね

 本当にアナタってバカなのね

 私がアナタを選んだのだって顔が少しばかり良いからとオヒトヨシなところが私の代わりに死んでくれそうって思っただけ

 そこに愛情も慈悲も全くないのに、私、すごく悔しい


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