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( ^ω^)終末、暇だし異世界救っちゃおっ☆  作者: 眞虱七火(ましらみななび)/新人だから応援してな
現世
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第二話『19区』

19区へと辿り着いた男

「(ここが19区か、人は居るのだろうか、遺産があればいいのだが)」


 19区へと着いた人形の男は生命の維持よりも古人共の遺産を探している。


「カンカンカン、ヒィ〜おひょろろろ、カンカンカン、ヒィ〜おひょろろろ」


 陽光を浴び銀色に輝く瓦礫の奥からリズムのある音と不快な老人の声のハーモニーが見えてくる。


「(芸術か、喉が乾く)」


 人形の男はその音のある方へと向かう。


「カンカンカン、ヒィ〜おひょろろろ、カンカンカン、ヒィ〜おひょろろろ」


 次第にその音の輪郭がくっきりと耳を支配してくる。


「カンカンカンーー」


 男は眼球に搭載された空間識別プログラムを起動する。


「(老いた赤子か)」


 130cm程の赤子の様な無垢の瞳を持つ腹部が膨れた老人が、リズミカルに金属の板を棒で叩いている。口からは涎が垂れ、猫背で姿勢が悪く座っている為か、推定の身長よりも小さく見え、また卑小に見える。


「カンカンカン、ヒィ〜ーー」


 銀色に輝く瓦礫の喉奥から気配を感じた。その気配はこちらへと向かってくる。


「あら、お客さん?珍しいのね、フフ、こんなところに一体なんの用かしら?フフ」


 喉奥から出てきたのは綺麗な水溜りが反射した青空の様なガラス質の眼球をし、少し剥がれ落ちひび割れた紅色の口を持つ女。そこら辺に転がっているのを見たことがある汎用型の義体の様だ。


「ビィ〜ガガガガッガッガッガ」


 人形の男の首の表層が剥がれ人工筋肉がめくれ露出した咽喉部いんこうぶから発せられる。


「ガー…ガガッシツレイ、セイタイキノウがコワレカケテイテネ、ガー…喋るのがあまり得意ではないんだ」


「フフ、あらそうなのね、フフ」


 決して波紋の浮かぶことのない水面の様な瞳がこちらを覗いている。


「フフ、して、ご用件は何かあるのかしら?旅人さん?」


「古代の遺産を探しているんだ。特に生きる意味も無いんでね。人の世に触れることが楽しいんだ」


「カンカンカン、ヒィ〜おひょろろろーー」


「フフ、あらそうなのね、それなら私達のキャンプにいらっしゃる?人の世に触れることが楽しいのであれば、フフ、歓迎するわ よ。もしかしたら書物などの遺産もどこかにあるかもしれないし、それがある場所を知っている人もいるかもしれないわ、フフ」


「そうか、そうさせて貰う」


「カンカンカン、ヒィ〜おひょろろろ〜」


 不快な老人の声と金属の板を叩く心地良く耳障りで吐き気を催すハーモニーが徐々に滲んでいく。


 左脚の駆動領域に支障をきたしているのかどこか歩き方のおかしい女の背中を追いながら瓦礫の草原を少し進む。

 ゴツゴツと冷たく四角い巨大な建造物の先端が綺麗に形を保ちながら他の崩壊した建物に支えられ斜めにその姿勢を保っている。女はその隙間へと入っていった。


「フフ、ここは私たち19区の民たちが暮らすキャンプよ、良いところでしょ?フフ」


 女は扉なき門に付いているセキュリティを解除する為に認証キーを展開、空間に青い幾何的な四角い光が覆う。


「(仰々しいだけで一体それになんの意味があるのだろうか)」


「フフ、いらっしゃい」


 と女はどこか機嫌が良さそうに振る舞う様に見えたが実際には物理的に表情が変わっている訳ではなかった。


 女は扉なき門を潜ると男を中へと煽る。


「お前は、何故あそこにいたのだ?」


「フフ、あそこにはご老人がいたでしょう?彼が生命を維持する為に必要な餌を配給していたの よ、フフ」


「随分と備蓄があるようだな」


「フフ、ええ、そう、ほら彼は珍しく残っている方だから、ね?フフ」


「そうか」


「フフ」


 女は相槌を打ち、そして続けた


「あなた用の資源も供給できるけれどお納めになられます?」


「ああ、ありがたく受け取らせて貰う。しかしいいのか?」


「フフ、いいのよ。このキャンプには半永久的に命力めいりょくを生産できる設備が整っているから、お気になさらず、ね?フフ」


 黄緑色の手入れされた若草から露出した乾いたコンクリートに4つの金属が打ち叩かれる音が響き渡る。

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