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お嬢様は婚約者様をからかいたい

作者: KiRa





「ルディ様、嘘ですよ」


「なっ!!君はなんで僕にばかり…っ!!!!」


顔を真っ赤にさせた、わたくしの婚約者様。

ルーデンス・ヴァンレット様。

あらあら、まあ!耳まで真っ赤になってしまって!


「ふふふふ、なんでって。ねぇ?お判りなのでは?」


「全くわからないのだがっ!!!!!!」


「だって、とてもステキな反応なんですもの。からかいたくなってしまうのは、仕方ない事ですわ。自然の摂理です」


「そんな自然の摂理なんてあるわけないだろ!!!!!聞いたことがないぞ!!!」


ダメですよ、ルディ様。

そんな真っ赤になって地団駄踏んでしまっては…


「だって、ルディ様。いじり甲斐があるんですもの」






* * * * *





わたくしリリアネス・ラインシュタインには生まれた時から婚約者様が決まっていた。

所詮貴族のお家同士をつなげる意味合いでの政略結婚で、そこに愛なんてない。

大恋愛をしたのちにおしどり夫婦になる貴族もあるけど、そんなの稀で実際は隠れて愛人の1人や2人、3人や4人、地方にいるなんてよくある話。

貴族に生まれた以上仕方がない事だと、わかってた。


そう。

ルディ様に会うまでは。




私がルディ様お会いしたのは、10歳の頃。

もともとやんちゃだったわたくしが、貴族としてのマナーを(マナー講師の先生がGOサインを)やっと出してくれた時だった。


あの時を振り返るとマナー講師の先生には大変な心労をおかけしたわね。

木に登って隠れたりイタズラするわたくしにめげずにひっ捕まえて、机にぐるぐる巻きにされたのは懐かしい記憶。

いつもボロボロになってわたくしを追いかけてくる先生と言ったら楽しくって…げふんげふん。

でも、おかげでボロが出ずに猫をかぶれるようになったのよね。



話を戻すけど、当時12歳のルディ様はそれはもう!

夜会デビュー前なのに貴族令嬢に目をつけられるぐらい、見目が整っていた。

少し猫っ毛気味なシルバーの髪に柔らかな目元の中にみえるブルーの瞳。

お家が王家に忠誠を誓うヴァンレット家の嫡男としてお生まれになったからか、すでにぱっと見てわかるぐらい細身のなりにも引き締まったボディライン。

そして、一番は…


「よろしくね、リリアネス嬢」


ほおをかきながら、眉を下げて困ったように微笑むお顔。

撃ち抜かれました。

ええ、撃ち抜かれましたとも。

可愛すぎるではありませんか!!!

それ以来、わたくしは心に誓ったのです。

生涯何があろうともルディ様を支えて、いじり倒すのだと!!!!!



「声に出ているぞ!リア!いじり倒すのだと!!!!ではない!!」


「あら、失礼しました。つい、本音が…」


「本音が…ではない!君はいつもいつも!!!!!」


「あ、そういえばルディ様。先日ルディ様がお好きなお茶菓子が手に入ったんです。一緒に食べませんこと?」


王都で人気の予約待ち多数な商家から取り寄せた焼き菓子をルディ様の目の前に出す。

どこから出したかっていうのは突っ込まないでくださな。

貴族令嬢には秘密があるんですのよ?


「……なんのことだ?僕はお茶菓子なんて好きではないぞ!」



そんなキラキラしたお目目で見られても、全く効果がありませんよ?

手に持っている焼き菓子を少し上下左右に動かしてみれば動く瞳孔。

ルディ様、分かりやすすぎます。


「あら、そうなんですの。私の勘違いでしたか。せっかく取り寄せたのに無駄になってしまいました。こちらはわたくしのそうで処分いたします」


パリパリと包装が剥がれる音が響く。

そこから焼き菓子を手に取りだした。

バターと甘い香りが空間に漂い、口に運ぼうとした瞬間。


「まて!食べないとは言っていないだろう?!せっかくリアが僕のために取り寄せてくれたのであれば、食べないのは失礼だろう!!いただくよ!!!」


「まあ!嬉しいです!!では、はい。あーん」


「え、あ、……っ!あ、あーん」


口ごもるルディ様の口元に焼き菓子を近づけ、そして!!


「あぁ!やっぱりこちらの焼き菓子は美味しいですわね!!ふんだんに使われたバターとナッツが混ざって歯ごたえもありとても美味しいですわ!」


あと少しでルディ様の口に入るという直前でわたくしの口元に戻して美味しく頂きました。

なっ?!と顔を真っ赤にして驚愕の表情をこちらに向ける。


「僕にくれると言ったじゃないか!」


「えぇ。そうなのですが、やっぱり好きではないものをお渡しするのはどうなのかと思いまして」


「せっかくリアが持ってきてくれたんだ。食べるに決まってるじゃないか!」


「まぁ!ルディ様お優しいのですね!!ですが、お気になさらないで!日を改めてご用意しますわ!」


「あ、いや…、でも……」


「ふふふふ、何をご用意しましょう!!」



ちらりと横にいるルディ様を盗み見る。

柔らかな目元の奥のブルーの瞳がうるうるしてきました!

眉がどんどん下がっていきます。

そしてお顔も下を向けてしまいました。

とても、愛らしい反応ですわね。



「ルディ様」


「なんだ…むぐっ?!!」




口に入ったものを当たり前のように噛み砕くルディ様。

今口に入ってきたのが、ご自身が好きな焼き菓子だとわかったからか口元が緩む。

しかし、どんどん顔が熟れたトマトのように真っ赤っかになりだす。

口をパクパクとお魚のように動かされ、こちらを見る。



「半分こ、ですわ」


「なっ!!!!き、君はまた僕をからかって!!そんなに僕が嫌いなのか?!」


「まあ、嫌いだなんて!そんなことはありえませんわ。だって…」



ルディ様の頰に手を添えて顔をこちらに向ける。

目と目が合う。



「わたくし、ルディ様のこと愛しておりますもの。たしかに最初は政略結婚でしたが、今は心の底からお慕いしておりますわ」



わたくしから告白されると思ってなかったのか、更に驚愕の表情を浮かべて、お顔だけでなく耳と首まで赤く染まる。

口元は先ほどのようにパクパクと言葉がでないようただ。

ふふふ、真っ赤になって可愛らしい。



「…?!なっ!!!!!」


「口の端に焼き菓子の残りがついていましてよ?」



ルディ様の口元の焼き菓子を親指と人差し指で取り、パクリと口に運ぶ。

ふふふふ、とまた笑みを浮かべる。



「うわぁー!!」



まるで乙女のように今だに真っ赤に染まった顔を隠すように腕で口元を覆い、全力でにげられました。

あぁ、もう後ろ姿があんなに小さく。



「うふふふ」



やはり、わたくしの婚約者様は素敵な反応をしてくださります。

あぁ、ルディ様。

早くわたくしを好きになって。

そして、

























いつまでも、わたくしに弄られからかわれてくださいな。








end




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