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台所の危機

 わらわらと一ヶ所に集まり始めた蜘蛛はみるみる人の形をとりはじめた。ボコリと開いた目と口の部分が例えようもなく不気味だ。ポロポロと蜘蛛をこぼしながら一歩、また一歩とアルとリンの方へ近づく。

 蜘蛛がひしめき合う手をリンの方へ差し出し、つかもうとするが、アルがさっと身を引く。

迫り来る手から目が離せないリンが「ひっ」と、声にならない悲鳴を飲み込むと、棚の上に居たオルガが後ろ足で耳の裏をカリカリと掻いた。

「やだ、ノミでもいるのかしら、このネコ」

リエラが嫌そうに言うと、さも憤慨したようすでネコが怒鳴り返す。

「だから、オルガ様と呼べと言っておろう!それにネコの形はしておるが、そもそもわしはネコなどではない!よく見ておれ」

どこからどう見ても、ただの白猫のオルガの耳の裏から何か光るものがこぼれ落ちた。床に落ちたそれは輝きながら人の膝に満たない程度に大きくなり一際強く輝くと、大きさが膝丈ほどしか無いこと以外は着ている服までリンそっくりの姿になった。まるでリンを型どった人形だ。

人形は、ゆっくりと蜘蛛の塊に目をむけると、ニコリと笑い優雅にカーテシーをした。蜘蛛たちが凍り付いたように一斉に動きを止めた。

 目の色だ!さっき魔法が暴発した時と同じ氷の海の青だ。アルの脳裏にさっきのリンの瞳が過った。

「確かにただのネコではなさそうですわね?」

「何あれ...」呆然とした様子でリンが呟く。気丈に振る舞っていてもそろそろ限界のようだ。抱き上げているリンの体からカタカタと細かい震えがアルの腕に伝わって来る。

「おぬしが台所を燃やすなと言うからの。そこの忍、貯蔵庫の扉を開けよ」

当然のようにオルガはリエラに指示する。

リエラは探るような目を向けたが貯蔵庫の扉を開けた。


人形は優雅な足取りで貯蔵庫へ向かう。蜘蛛たちは魅いられたようにユラユラと人形に続く。蜘蛛はもう人の形を保っていられないようだ。バラバラと折り重なりながらも人形を追う。

やがて人形がヒラリと貯蔵庫に入ると蜘蛛たちはぞろぞろとそれに続いた。最後の一匹が入ってしまうと、リエラが扉をパタンと閉めた。

 

 静寂が訪れ、全員顔を見合わせる。

「あっけない?感じでしたわね」

「何を言っとる、外に出して早く燃やさねばわしの術が切れてまた出てくるぞ」

 オルガが慌てて言った。

「それを早く言って欲しいですわ」

リエラは貯蔵庫をよっこらしょと抱えて裏庭に出ると早速炎の魔法で燃やしはじめた。






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