588列車 こわいかお
2062年3月24日・金曜日(第17日目)天候:曇り時々雨 西日本旅客鉄道東海道本線守山駅。
「ただいま。」
ウチが家に戻ってくると誰も出迎えてはくれない・・・。
「・・・。」
玄関の靴を見ると見慣れた靴の中に一つそれとは異なるものがあるのに気付く。
「・・・来てるな・・・。」
ウチは革靴を揃えておき、家の中へと入った。
「ただいま。」
そう言いドアを開けるとすぐに亜美ちゃんがドキッとする。
「あっ、光おか・・・ヒッ。」
「二人そろってそんなにビックリしなくても良いだろ。」
「怒りが顔に出てるもん。」
「ホント、心臓に悪いからその顔辞めて。」
「・・・。」
二人のためにも怒りのフィールドの解除するか。このまま展開していても、亜美ちゃんとは話せないしなぁ・・・。
「智萌久しぶりだな・・・。またお金目当てに来たの。」
「おい。弟の中で私のイメージってどうなってるの。別にお金目当て出来たわけじゃないわよ。今日は亜美ちゃんに相談があったから来たの。ほら、子育てじゃ亜美ちゃんはエキスパートでしょ。」
「そう。」
「ところで、私に話があるんじゃないの。」
亜美ちゃんが言うので、
「智萌。ちょっと席外してくれる。」
「奥さんと今夜のお話かなぁ・・・。」
「ふざけるな・・・。」
智萌にそう言うと黙って席を立った。部屋から出るのを待ってからウチは話を切り替える。
「そう。亜美ちゃん、もしかしてだけどお父さん達がやってるのって。」
「・・・。」
亜美ちゃんはそれに一旦目をそらす。
「誰から聞いた。」
「輝から。」
「・・・そう・・・。乗り鉄パステルはの目は誤魔化せないか・・・。」
「・・・誤魔化せないって・・・。」
「光ちゃん、そのことは私も謝らなくちゃいけないなんて微塵も思ってないのよね。」
「ほう・・・。亜美ちゃんはついに旦那も煽り始めるのか・・・。」
「煽るかどうかは、私の話を聞いてから判断して。それとその顔怖い、亜美ちゃん泣いちゃうよ。」
亜美ちゃんのこの言動には智萌もあきれかえっている。ウチも半分呆れているのだけど・・・今のままじゃあ頭ごなしに亜美ちゃんのことを否定するだけか・・・。そんなことはするべきじゃないな・・・。亜美ちゃんの言うとおり話を聞いてから自分で判断するか。
「あの切符さ、私が切符の起点と終点を決めたわけじゃないのよ。もちろん、コンピューターで計算すれば、100%あの切符にはならないの。・・・私があの二人にお金の面で支援するって言った後、嬉野温泉から稚内で切符作ってくれって言ってたのよ。」
「・・・。」
「・・・クライアントの希望するものを作る。それが業務だったもの同士でしょ。クライアントの希望しないものを作るのがどれほど意にそぐわないことをしているか、光ちゃんなら分かるでしょ。」
「・・・。」
「だから、私は微塵も謝る気は無いわ。」
自分の非がないからか・・・。確かに、今回のこと亜美ちゃんには何の非もないな・・・。これで亜美ちゃんを責めることはなぁ・・・。
「・・・分かったよ。亜美ちゃんがデータ入力するのミスったと思ったから。」
「・・・ミスったかぁ・・・。私も、そこ以外で綻びがあったら謝るわ。私だって完璧じゃないもの。」
「・・・あの切符は経路が多すぎるよ。綻びがあったって文句言えないだろ。17万かけて作らせたものだからなぁ・・・。」
ウチは亜美のフォローをしたつもりだ。あの切符の経路は格が違いすぎる。作る先が九州旅客鉄道だったとしても、多少のミスがあるだろう。アレは普段乗客が親しんでいる自動券売機では発券すら出来ない代物だからだ。
「亜美ちゃん、ウチに言ってくれたら良かったじゃん。」
と言う。
「ごめん。今思えば言った方が良かったかなぁ。」
「良かったな。結果的に・・・。」
後はちゃんと輝がウチの言付けを守ってくれるかどうかだな・・・。念押ししたから大丈夫だとは思うけど・・・。




