表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAIN TRAFFIC6 -日本一の切符2062-  作者: 浜北の「ひかり」
Longest Japan Railways Ticket
6/254

531列車 去る2017年3月4日

「来る2017年4月1日。日本の鉄道網を支えているJRは発足30周年を迎えます。」

その口上から始まる動画を開いた。画面には雪を巻き上げて走る赤と緑の新幹線が右から左へ高速で駆け抜ける。画面が切り替わり、SLが走る場面へと変わる。走っているSLはJRじゃないらしいが、鉄道に詳しくない私にはその違いがよく分からない。このシリーズの動画を見始めた時、「真岡鉄道(もおかてつどう)だな、これ。」とおじいが言っていた。その時は見ただけでよく分かるなぁと思ったものだ。

「またその動画見てるのか。」

そう言い左隣に常陸(ひたち)兄が座ってきた。

「良いじゃん。好きなんだし。」

「どっちが好きなんだよ。その動画のうp主。」

「知ってるでしょ。おじいと同じぐらいの歳だって。」

「ハハハ。」

常陸(ひたち)兄は私の左腕に付いているホログラムをいじり、勝手に画面を大きくする。見やすくなるのは良いのだが、これされるとホログラムの充電減るのが早くなるんだよなぁ。

播州(ばんしゅう)って人も馬鹿なこと考えるよなぁ。」

「馬鹿な事って・・・。常陸(ひたち)兄だって馬鹿じゃない。電車で東行ったり、隣の駅に行くのに13時間もかけて行くなんて考えらんない。」

常陸(ひたち)兄は乗り鉄って言う鉄道ファンだからなぁ。私からしてみるとかなり変人じみたことをよくやっている。電車で東京(とうきょう)行ったり、隣の駅に13時間かけるのはまだまだ可愛いほうだ。今年の夏にはママに頼んで新幹線の列車種別をコンプリートしながら、札幌(さっぽろ)まで行っていたからな・・・。しかも、その本人は帰ってきて「「はやて」に乗れてないんだから、コンプしてねぇんだ」って言ってるし・・・。もう訳が分からない。

「良いだろ。勉強場所としては最適なんだからさ。」

「信じらんない。」

稲穂(いなほ)は分かってくれると思うんだけどなぁ・・・。」

「分かるわけ無いでしょ。」

「お前、初登場がこんな暗い場所で何やっているんだとおっしゃる方もいらっしゃると思いますが、ただいまの時刻は21時30分。後ろにありますは東日本旅客鉄道(ジェイアールひがしにほん)東京(とうきょう)駅です。私このチャンネルの投稿者であります、播州(ばんしゅう)亜多琉(あたる)と申します。私自分のことをあだ名で呼ぶというのが嫌いでございまして、この後私が「播州(ばんしゅう)です」と名乗ることは無いと思いますので、ここで名前を覚えていただけるとありがたいです。」

「隣良いかな、稲穂(いなほ)ちゃん。」

「良いよ、おばあ。」

右隣におばあが座る。

「おっ、「サンライズ」。」

常陸(ひたち)兄の目がきらりと光る。電車大好きの常陸(ひたち)兄には夜を越える電車というのに並々ならぬ関心があるのだろう。だが、私からしてみるとなぜ新幹線よりもこんな地味な電車なのだろうか。

「「サンライズ」はおばあちゃん乗ったことないのよねぇ・・・。おじいちゃんは乗ったことあるのに・・・。」

おばあもこんな地味な電車好きなのかぁ・・・。

「おばあ、何でこの「サンライズ」って言うのがそんなに良いの。」

「そんなの決まってるだろ。ロマンだよ、ロマン。新幹線なんて旅情なんて無いだろ。鉄道で旅するなら、やっぱり時間かけて、翌朝に目的地に着くって言うロマンが・・・。」

常陸(ひたち)兄には聞いてない。」

「理不尽。」

「・・・うーん。そう聞かれるとおばあちゃんも困るなぁ・・・。」

そこまで言うとおばあはおじいを呼んだ。近くに来たおじいに私は「新幹線と寝台特急どっちが好きか」とぶつけてみたが、おじいからは「寝台特急」と即答された。

「何で。何でそろいもそろって新幹線じゃないの。」

「新幹線って、早いからな。」

「早いのが良いことじゃないの。」

「うん、でもそうじゃないんだよ。景色がどんどん後ろに流れていくのは見てて飽きないけど、寝台特急みたいに起きたら全く知らない景色が広がってるって言う楽しみはどこにもないからね。・・・うーん、飛行機で北海道に行くのと青函(せいかん)トンネル通って北海道に渡るのと同じような違いだな。」

「あっ、うん。分かんない。」

無理、私にはその感覚は理解できない。

 18分の動画が終了すると私はホログラムを閉じた。

「次の動画には行かないのか。」

常陸(ひたち)がそう言うと、

常陸(ひたち)兄は少し黙ってて。おじい、おばあ。本当に最長往復切符する気は無いの。」

「えっ。」

「する気があっても体力がねぇ・・・。」

「する気があってもお金がねぇ・・・。」

二人とも声を揃えて言う。おじいが「体力」、おばあが「お金」と言ったのは聞き取れた。ただ、どちらも「する気があっても」と言っていた。

「おじい、おばあ。私は最長往復切符の旅をして欲しい。昔私に言ってた広い日本を二人には見てきて欲しいなぁ。」

「・・・。」

「ああ、でも稲穂(いなほ)ちゃん。」

「・・・私の知ってる二人はそんな理由で行かないって決めるような人じゃ無いもん・・・。」

「その通り。稲穂(いなほ)の言うとおり。」

「・・・。」

二人は少しの間黙っていた。先に口を開いたのはおじいだった。

「そうだな。うん。」

「えっ、ちょっとナガシィ。旅程はゆっくりプランでも良いかもしれないけど、お金はどうするの。」

「今まで真面目にしてきたんだし、少しの散財くらいで罰なんか当たらないって。」

「・・・そう簡単な話じゃないでしょ。」

「そうだけど。僕の性格はよく知ってるでしょ、(もえ)。」

「・・・ああ・・・、うん。」

おじいが先に席を立ち、おばあが席を立った。

稲穂(いなほ)。二人が「最長往復切符の旅しない」って言ってたのは本当なのか。」

「本当よ。でも、これでしてくれるんじゃないかな。」

「まぁ、俺たちに播州(ばんしゅう)さんの動画を見せてくれた人たちだもんなぁ・・・。俺も同じ鉄道ファンとして、二人には最長往復切符して欲しいしね。」

「・・・。」

後はこっちの仕事・・・だな。


登場人物

永島(ながしま)亜美(あみ)の子供達

永島(ながしま)常陸(ひたち):由来常磐線(じょうばんせん)特急「ひたち」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ