578列車 大袈裟太郎
2062年3月20日・月曜日(第13日目)天候:曇りのち晴れ 西日本旅客鉄道東海道本線草津駅。
「ごめんねぇ・・・。せっかくのお休みだったのに。」
起き上がった状態で元気そうにしている姿を見ると萌はほっとした。
「もう、ビックリしたよ。昨日大希君から電話がかかってきたときわねぇ。」
「大希は私のことになると何でもかんでも大げさに言うのよ。大げさに言うなって、何時んなったら分かるのかな。」
「永遠に来ないら。」
「来ないかなぁ・・・。来て欲しいだに。フフフ。」
「アハハ・・・。」
「ナガシィ君もごめんね。今日ぐらいゆっくりしたかったでしょ。」
「謝る必要は無いよ。」
僕はそう言うだけにとどめた。そりゃ、ゆっくりはしたかったけどさぁ、萌の知り合いが倒れたって言うんじゃ黙ってられないでしょ。
「それにしても、何だったの。」
「軽い立ち眩みよ。もう、大希の奴私は別に倒れたりとかしてないのに。今日お見舞いに来たら怒らなくっちゃね。」
「何だ・・・。よかった。」
「私もそんなんで入院とか大袈裟だって言ったんだけどねぇ。でも、大事取った方が良いってうるさくて・・・。そんなにうるさく言わなくてもいいでしょ。そんなすぐに死んだりしないら。」
そう言いながらも、どことなく満更でもない表情を浮かべる。
「うちも同じだって。ナガシィも私が「どうかなったら僕どうしたら良いの。」って言ってるし。ねっ、ナガシィ。」
僕は目をそらした。
「フフフ。愛されてるわねぇ。」
「うん。そう言う梓もね。」
「フフフ。ああ。それにしても次に萌ちゃんに会うのはこういう形じゃ無いと思ってたんだけどなぁ。」
「人間この歳になると何かとねぇ。」
「フフフ。私もそれは実感したわ。退院したらもうちょっと大希にくっついといてあげようかな。」
「大希君喜ぶと思うよ。いっぱいくっついてあげたら。」
「家の中でぐらいならね。」
「ええ。公衆の面前で愛をまき散らしとけば。」
「それは私が嫌かな・・・。大希のことは愛してるけど、私はそう言う柄じゃないし。知ってて言ったな。」
「ハハハ。知ってて言ったに。」
「・・・良いなぁ。二人とも一生分の旅行してるんでしょ。」
「梓も大希君と旅行したい。」
「うん・・・。白浜とか、城崎とか。そうとは言わずもっと遠くに行ってみたいかな。別府、人吉。まぁ、色々よ。」
「人吉温泉に混浴って場所があったわよ。」
ああ、あの「?」の点いた奴か。
「それは大希が喜ぶやつだに。私が喜べないじゃん。」
「普段から、混浴してるら。」
「してない、してない。混浴してたのは結婚したてとかだけだって。・・・混浴はどうだっていいの。私は普通に旅行がしたいって言ってるだけ・・・。」
「普通にかぁ・・・。海外とか行かないの。」
「海外はねぇ。大希があんまり行きたがらないのよ。飛行機で行くってなったら沖縄か北海道くらいかな。」
「北海道は良いよ。」
「良いだろうねぇ。一度は大希と北海道でも行ってみようかな。お金どうしよう・・・。」
「・・・。」
「バアバ。」
その声で梓のいるベッドの脇に一人子供が走ってきた。
「ワッ、ビックリした。」
「バアバ、元気。」
「うん。元気よ。・・・蒼ちゃん、パパとママは。」
「もうすぐ来るよ。」
「コラッ、蒼君。病院の中で走っちゃ・・・。あっ、ごめんなさい。お見苦しいところを・・・。」
そう言いながら、絢萌ちゃんが入ってきた。それに続いて、旦那さんも入ってくる。
「お母さん倒れたって聞いたから、飛んで来ちゃった。」
「ハハハ。それはお父さんが大袈裟に言っただけだから。でも、飛んで来てくれてありがとう。」
「・・・梓、私達はそろそろ帰るわ。」
「えっ、もうちょっとユックリしていけばいいだに。迷惑なんかじゃないわよ、ねぇ。」
そう言い、梓は蒼君と呼ばれる孫に同意を求める。蒼君はただ「うん」と良い返事をしただけだ。
「でも、明日も速いのよ。明日は京都、金沢とかまわって戻ってこないと行けないから。」
「そんなハイペースで行かなくてもいいだに。ユックリしていけば。今してる旅行もさ。」
「いやぁ・・・。そうなんだけど、指定席とかも取っちゃってるし。色々とねぇ。」
「・・・そう・・・。残念。」
「じゃあ、またね。明後日そっちに顔だそうか。」
「その時には退院してると思うから、待ってるわよ。」




