576列車 早い最終列車
2062年3月18日・土曜日(第11日目)天候:晴れのち曇り 西日本旅客鉄道姫新線姫路駅。
「・・・。」
姫路駅から歩いてきたが、僕らの口数はだんだんと少なくなっている。大きい荷物は姫路駅のコインロッカーに預けてきているから、身軽のはずなのだが・・・。
「姫路城って案外遠いねぇ・・・。」
「遠いなぁ・・・。」
「こんなに遠かったっけ。」
「徒歩20分って書いてあるもんなぁ・・・。駅からバスか、タクシー拾っていけばよかったかな。」
とは言ったが、姫路城までの道のりはもう半分くらい来ている。
「バスとか使うのは後にしよう。」
なんだかんだ言いつつ、姫路城に到着する。
姫路城は兵庫県姫路のシンボルだ。白鷺城の愛称を持つお城は白く、美しい。大きさは白としての権威をまわりに示しながら、そびえている。
「姫路城ってやっぱり他のお城とは違うよね。」
萌が言う。
「世界遺産だからじゃない。」
僕が言う。
「やっぱ、世界遺産って聞くとすごいんだなぁって思うよねぇ。」
「・・・。」
とは言っても、昨今の「世界遺産の安売り」はどうかと思うけどねぇ・・・。2010年代以降それが目立つ気がする。記憶遺産も、文化遺産も金積めば良いという魂胆で登録を目指そうとするのは方向性が違う気がしてならない。
播州さんもそのことには触れていた。そのうえで「自然遺産が最も価値あるものでは無いか」とも言っていたな・・・。
僕がそう思っている世界遺産でさえ、姫路城には何かしらの息吹を感じるのだ。それは安売りが開始される前だったからだろうか・・・。
「ナガシィ。姫路城の中見てこ。」
萌は僕の手を引いて、姫路城へと連れて行った。
姫路城を見終わってから、姫路駅に戻る。姫路駅からは姫新線の列車に乗るのだが、列車に乗る前に晩ご飯を済ませる。この先廃道に移動を重ね、本日の目的地鳥取駅には21時30分過ぎに到着する予定だからだ。
在来線の改札口で最長往復切符をみせ、姫新線と山陽本線の間に接地されている改札口でも最長往復切符をみせる。改札口の中に改札口がある駅は西日本旅客鉄道には多い気がする。だが、同じ在来線で改札内に改札を作る必要があるのかは疑問である。
姫路17時25分→播磨新宮17時59分
播磨新宮18時09分→佐用18時39分
ステンレスの車体に「KISHIN Line」のロゴマークが入るディーゼルカーに乗り、播磨新宮で乗り換え、さらに佐用でも乗り換える。佐用駅が近づいてくると智頭急行の高架橋が見えてくる。前に智頭急行から姫新線を見たとき、この二つの路線の格差を見せつけられたものだ。姫新線は見た目から廃れているように見えたのは印象的だった・・・。
佐用18時41分→「快速」→東津山19時36分
佐用からはキハ120系で運行する快速列車に乗り換える。快速とは言っても通過駅はたった一つ楢原という駅だけだ。この快速は最も利用者の少ない駅だけ通過しているのだろうか・・・。だが、キハ120系に「快速」の種別表示が出ているのはなんとも珍しいものだ。
この列車を降りる東津山駅は津山駅の一つ東である。昨日は津山駅に立ち寄っている。24時間以上かけて、隣の駅にまでやってきたのだ。次に乗る列車は津山からやってくるが、最長往復切符の有効は東津山までとなっているため、ここで列車を降りざるを得ない。もちろん、お金をかけたくなければの話だが・・・。
東津山19時46分→智頭20時49分
来た車両はまたキハ120系だ。だが、この列車に乗ると自然と落ち着いた。
「これで、鳥取には着けるわね。」
「そうだな・・・。これが僕たちの最終だからなぁ・・・。乗れてよかったよ。」
言葉の通りだ。因美線の列車は僕たち乗っている列車の後20時52分津山発の美作加茂行きがある。美作加茂は東津山~智頭間に有り、この列車では鳥取に到達することが出来ないのだ。
「不思議と落ち着くわね。乗ってるのはキハ120なのに。」
「・・・キハ120でもだな・・・。」
智頭駅にはいる手前で再び智頭急行と合流する。高架橋が右から降りてくる。因美線を走るキハ120系が走る先には貧弱な線路が照らし出され、右側には見た目から強靱な線路が照らし出される。
「この切符で智頭急行が通れたらなぁ・・・。」
萌の言いたいことは分かる。智頭急行は山陽から鳥取間を結ぶ短絡線だからなぁ・・・。普通列車や必殺徐行がかまされる姫新線や因美線とは格が違いすぎる・・・。
地図からは岡山からやってくる特急「スーパーいなば11号」で鳥取に行く。カーブの度に車体を傾け、高速で鳥取へとかけていく。鳥取駅の手前で高架橋にあがり、ホームへと滑り込んだ。
智頭21時04分→「スーパーいなば11号」→鳥取21時31分
最長往復切符往路鳥取駅で途中下車




