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MAIN TRAFFIC6 -日本一の切符2062-  作者: 浜北の「ひかり」
Longest Japan Railways Ticket
4/254

529列車 信じたくない

 私は走った。普段から日課で朝は走っている。ようやく明るくなってきた外は多少視界がきき始めているだけだ。

「ハァ、ハァ・・・。」

立ち止まると冷たい空気が頬をかすめる。耳を澄ませば鉄橋を電車が渡る音がする。

稲穂(いなほ)、どうかした。」

私を呼ぶ声がした。彼女は私の友達帝釈(たいしゃく)亜寿佳(あすか)。同じ陸上部員だ。

「・・・。」

首をかしげる帝釈(たいしゃく)。何でもないといって切り抜けるにも、なんだかそれをしたくない。

「走りながらでいいよ。聞いてくれない。」

「おう。稲穂(いなほ)の言うこと何でも聞いてあげる。」

とは言ってもあんまり理解はしてもらえないだろうなぁ・・・。

「私のおじいとおばあ旅行好きって言うのは亜寿佳(あすか)も知ってるよね。」

「うん、知ってる。」

それは私が一番よく話したことだからなぁ・・・。

「そのおじいとおばあが旅行行かないっていいだしたの。」

「はっ・・・。えっ、あの二人が。・・・いやいや、あり得ないって。旅行好が旅行行かないなんてあり得ないじゃん。」

「そう。私もあり得ないと思った。たださ、昨日のおじいとおばあの会話聞いてたら、もしかしたら本当なのかもと思って・・・。究極の旅行をやめて、北海道行くなんて信じらんないよ。」

「・・・。」

帝釈(たいしゃく)の顔がきょとんとする。究極の旅行をやめても、北海道に行くなら旅行してるじゃんと言いたそうだ。ここだ、私が一番理解してもらえないと思ったのはここだ。

「もしもし、それって旅行してるから、別に稲穂(いなほ)の心配するようなことじゃないんじゃないの。」

「これで心配しないのは二人のこと知らないからだよ。おじいもおばあも私が小さい時からいつか究極の旅行しようって言ってたんだよ。広い日本見てきたいねって言ってたんだよ。私は・・・おじいとおばあに広い日本を見てきて欲しいの。そりゃ、そういうこと知らなかったら、私もそうだったかもしれないけど、そういうこと知った上で昨日の会話聞いちゃったから・・・。」

自分でも熱くなっているのが分かる。

「分かった・・・。稲穂(いなほ)が旅行好きなのは分かった。でも、稲穂(いなほ)。あなたのおじいちゃんもおばあちゃんも家でゆっくりしたくなったんじゃないの。」

「そんなの・・・私は認めたくない・・・。」

「・・・。」

認めたくない・・・。

 帝釈(たいしゃく)と分かれて、家に戻ると私は朝ご飯の準備に取りかかろうと台所に行った。

「あっ。」

台所に入るとおばあと目が合う。

「おはよう。稲穂(いなほ)ちゃん。疲れたでしょ。ちょっと休んでなさい。」

「いいよ、おばあ。私も手伝う。」

私は腕をまくって、手を洗い、叔母あの手伝いを始めた。

(もえ)。」

振り返るとスーツに身を包んだ叔父委がいる。今日も仕事なのか。今日は日曜日だが、叔父委の仕事に曜日は関係ない。この光景にはもう慣れたものだ。

「ごめんね。ちょっとおじいちゃん送ってくるから、一人で準備してて。」

「大丈夫だよ、おばあ。行ってらっしゃい。」

「行ってくるね。」

「行ってくるよ、稲穂(いなほ)。」

二人が玄関の方へ歩いて行くのを見送り、

「さて、朝ご飯準備しますか。」

自分を奮い立たせた。

(調味料がないんで、どうしようと思ったのです。こんな時は焼きそばのソースで代用しました。)

「・・・。」


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