564列車 秋芳洞
2062年3月13日・月曜日(第6日目)天候:晴れ時々曇り 西日本旅客鉄道美祢線美祢駅。
「いつもごめんね。」
萌はドライバードロイドに話しかける。だが、「お気になさらず。」とただ返してくるだけだ。本当はバスで行きたいところだったのだが、美祢駅に到着してから次の目的地に行くバスは1時間ほど無い。さらに目的地に着く直前のバスで戻ってこなければ、行程そのものに影響が出るようになってくる。行程は組みづらい。
美祢→秋芳洞
到着した先は秋芳洞という鍾乳洞だ。ドライバードロイドを駐車場で待たせ、僕たちは鍾乳洞に足を踏み入れる。太陽の光がなくなり、ひんやりとした空気が僕らの頬をかすめていく。
「涼しい・・・。」
「ああ・・・。」
「ここってすごいねぇ・・・。」
トンネルになった場所に声がこだまする。
「広いなぁ・・・。」
「本当・・・。こんなに広い空間が長い時間をかけて空いたなんて、想像も出来ないよねぇ。」
「まぁ、想像出来る人なんていないでしょ。僕らが生きるよりもはるかに長い時間をかけて、こういう形になったんだからさ。」
秋芳洞元々海の底で、ここの土壌は数多くの珊瑚が積み重なって出来たものである。それが地震などの自然現象により隆起し、長年の浸食によってこういう形を作っている。形成は110万年とか、10数万年とか言われているが、その数字の違いは僕ら観光客にとって、大きいようで小さいものだ。
「それにしても、ここを秋芳洞って名付けた人のセンスはいいよねぇ。本当に一度は来てみたいところね。」
「確か、秋芳洞って名付けたのは昭和天皇の付き人だったかな。」
僕は播州さんの動画を思い出す。昭和天皇が考えた名を授かることは恐れ多いとして、付き人が名付けたんだったっけなぁ。
中へ進むと美しい山が出てくる。案内のプレートには「洞内富士」と書かれる。山麓から山頂へ美しい三角形で有り、その風貌はその名の通り「富士山」を彷彿とさせる。といっても、この山も石灰の塊である。天井に届くか届かないかの高さのある山も、天井に届いている太い柱も、これらは全て上から「ポタン、ポタン」と流れ落ちる石灰を含んだ水の流れによってできあがったものである。
「・・・綺麗。」
萌が一言。僕はただ、これの形成を理解しようとただ見つめているだけだった。
秋芳洞→美祢
秋芳洞から車で美祢駅に戻る。ドロイドに声をかけ、キハ120系でさらに南下する。
「播州さんの言うとおりだね。天皇陛下が目を付けるところなら、行って損はないね。」
「そうだなぁ・・・。」
「・・・どうかした。」
「んっ、自然ってさぁ、原理は分かっても人には理解出来ないものなのかなぁって思っただけだよ。」
「ああ、何か悟りを開いてる。」
美祢14時38分→厚狭15時05分
最長往復切符往路厚狭駅で途中下車




