558列車 天領日田
2062年3月10日・金曜日(第3日目)天候:曇り 九州旅客鉄道久大本線日田駅
「ほう・・・。」
僕たちは展示物に見入った。ここは天領日田資料館。江戸時代に書かれた地図や子文書が保存されているのだ。
大分県日田市は元々江戸幕府の直轄地となっていた土地だ。その重要さはこの資料からも察することが出来る。
日田には5つの川が流れている。その全てが日田の近くで合流している。これのおかげで日田にはそれぞれの流域から運ばれてきた物資が集まっていたのだ。物資が集まれば人が集まる。それが日田を直轄地にした最大の理由であろう。
「日田って幕府の直轄地だっただけあるわね。これだけ発展したのは幕府のおかげかしら。」
「違うだろ。日田の人たちの努力のおかげじゃないの。」
「それもそうか。」
「そう、そう。」
さて、天領資料館を見てから僕たちはゆっくりと日田駅に向かう。今日はいつにもましてゆっくりしている。乗る列車は13時台の特急列車だし、今日の目的地は熊本と非常に近い場所となるからだ。
お昼ご飯を済ませてから、日田→夜明の乗車券を購入して、ホームへ立つ。
大分方面からは緑色の特急列車が入線した。ディーゼルカーの割にうるさくないのはこの車両がモーターで走っているからだ。久大本線の観光特急「ゆふいんの森」だ。
車内に入り、客室の方へ行くと階段が現れる。この車両は高い位置に窓が付いている。その位置に登る為には階段を上らないとならない。
「ナガシィ。頑張って。ほら。」
「おいおい・・・。」
そうこうしているうちに、「ゆふいんの森」は日田駅を発った。
日田13時02分→「ゆふいんの森2号」→久留米13時45分
日田→夜明の乗車券使用開始および終了
最長往復切符往路夜明駅から使用再開
「あれ・・・。」
「まもなく久留米です。」
いつの間にか寝ていたらしい。僕は萌を起こして、すぐに降りる準備をした。「ゆふいんの森」から降りて、出発を見送る。
「もう着いちゃったの・・・。」
萌がため息をついた。
「お昼ご飯食べ終わってからだったからな。気持ちよくなっちゃったんだな。」
「あーあ。せっかく楽しみにしてたのに・・・。」
「また乗ろうよ。今度は寝ないように。」
「・・・そうね。それが出来るのは最長往復切符のいいところね。」
「そうそう。復路があるんだから、ポジティブに行こうよ。」
「うん。」
久留米14時19分→「快速」→大牟田14時47分
大牟田14時51分→熊本15時38分
久留米駅で鹿児島本線に乗り換える。新幹線で行ってもいいのだが、新幹線では早く着きすぎてしまう為、のんびりと普通列車で移動する。
熊本には16時前に着いたが、ホテルに直行した。「ゆふいんの森」で寝てしまったことがお互いに響いているらしい・・・。
最長往復切符往路熊本駅で途中下車
一口メモ
九州旅客鉄道YC81系100番台
液体式ディーゼルカーを置き換える為に製造されたYC81系に「ゆふいんの森」の車体を乗せて製造された。長らく遣っていたキハ71系を置き換えた為鉄道ファンの間ではあまりいい評価がされていない。だが、車内設備などキハ71系よりも格段に向上している為数多くのアンチをファンに変える魔法の車両でもある。




