表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/254

555列車 聖地肥前山口

 2062年3月8日・水曜日(第1日目)天候:晴れ 九州旅客鉄道(ジェイアールきゅうしゅう)九州新幹線(きゅうしゅうしんかんせん)長崎(ながさき)ルート肥前山口(ひぜんやまぐち)駅。

 新幹線はあんまりスピードを上げないまま肥前山口(ひぜんやまぐち)駅に到着した。

最長往復切符往路肥前山口(ひぜんやまぐち)駅で途中下車

 ここで降りたのは他でもない。ここに来たら必ず見ようと思っていたものがあるからだ。途中下車印を押して貰い、肥前山口(ひぜんやまぐち)駅の北口に向かった。

 階段を降りていくとそれはあった。

「これが最長片道切符のモニュメントなのね。」

(もえ)がつぶやく。

「これかぁ・・・。結構大きいかな。」

記念碑は結構汚れている。モニュメントにはタツノオトシゴとして描かれた日本列島の絵がある。列島縦断12000キロ。JR最長片道切符42日間の旅と書かれた赤文字はかすれて読みづらくなっているところがある。

 JR最長の切符。これの始まりは日本最北端の駅、稚内(わっかない)駅であるが、その終わりはここ肥前山口(ひぜんやまぐち)駅である。この切符の旅が行われたのは2004年。今から約60年前の話である。それから九州新幹線(きゅうしゅうしんかんせん)長崎(ながさき)ルートの武雄温泉(たけおおんせん)長崎(ながさき)間が開業するまで肥前山口(ひぜんやまぐち)駅は最長片道切符の終点として君臨していたのだ(今は武雄温泉(たけおおんせん)が最長片道切符の終点である)。

「究極の旅行とは言ったものよね。」

「究極でなくなってあと少しで半世紀も経つんだな。」

僕たちはつぶやく。今僕たちの手にはこの切符を遙かに上回る切符を持っているからだ。究極の旅行は13年経って姿を変えた。今から僕たちは究極の旅行に旅立つのだ・・・もう旅立ってるけど・・・。

「行ってきます。」

僕たちはモニュメントに声をかけ、肥前山口(ひぜんやまぐち)駅の構内に行った。在来線の改札口で最長往復切符を見せ、ホームに入った。今度見に行ったのは門司鉄道管理局(もんてつ)の局長が書いた「旅情」という文字の入る石碑だ。これを見ると「今日本の中で私が一番この言葉に似合っているのではないか」と言いたくなる。

「言うことないの。」

「言うことって・・・。じゃあ、言ってみるかな。」

僕は石碑に近づいてから、

「んんっ。あー、今日本の中で私達が一番この言葉に似合ってるんじゃないでしょうか。約100日後にはこの言葉がどう私達の目に映るのでしょうか。それでは行って参ります。」

「えっ、それ・・・。」

「ダメ。」

「ううん。ダメじゃないよ。いや、もっと別なこと言うと思ったから。」

「ハハハ・・・。あー恥ずかしかった。」

「フフフ。私しか見てないよ。」

「嘘言うな。人いるじゃん。」

「フフフ。」

「ハハハ。」

 2両編成の817系が後ろを通り過ぎた。肥前鹿島(ひぜんかしま)に向かう普通列車らしい。あの列車に乗れば、播州(ばんしゅう)さんが初めてやった「最長往復切符の旅」の始発駅肥前白石(ひぜんしろいし)駅に行くことが出来る。

「普通列車来たよ。肥前白石(ひぜんしろいし)でも行ってみる。」

「行ったって何もないだろ。新幹線で博多(はかた)駅戻って、今日はもうゆっくりしよう。」

在来線と新幹線の乗り換え改札を通り、新大阪行きの新幹線「かもめ号」に乗って博多(はかた)駅に戻った。

肥前山口(ひぜんやまぐち)14時02分→「かもめ666号」→博多(はかた)14時34分

最長往復切符往路博多(はかた)駅で途中下車


一口メモ

九州旅客鉄道(ジェイアールきゅうしゅう)長崎本線(ながさきほんせん)新鳥栖(しんとす)肥前山口(ひぜんやまぐち)間・佐世保(させぼ)線肥前山口(ひぜんやまぐち)武雄温泉(たけおおんせん)

九州新幹線(きゅうしゅうしんかんせん)長崎(ながさき)ルートの並行在来線にあたる。整備新幹線は並行在来線の経営分離をされるのが定石であるが、この区間は依然として九州旅客鉄道(ジェイアールきゅうしゅう)が運営している。これは長崎(ながさき)ルートのフル規格建設と引き替えに、佐賀(さが)県がこの区間の整備費を出すことで決着した為である。結果的に優等列車の設定がなくなり、佐賀(さが)県の負担が増えている為、「第三セクターに移行したのと同じ」との見解を持つ議員もいる。事実、フル規格整備が決定したとき、選挙の争点にさえなった。


「かもめ」

九州新幹線(きゅうしゅうしんかんせん)長崎(ながさき)ルートに設定されている超特急。「600台」の「かもめ」は山陽新幹線(さんようしんかんせん)に直通し、「400台」の「かもめ」は九州新幹線(きゅうしゅうしんかんせん)内で運行が完結する列車である。「かもめ」は山陽新幹線(さんようしんかんせん)内では「ひかり」・「さくら」と同じ位置づけであり、「あかつき」のように「のぞみ料金」は発生しない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ