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766列車 南端

 2062年6月19日・月曜日(第104日目)天候:曇り 九州旅客鉄道(ジェイアールきゅうしゅう)指宿枕崎線(いぶすきまくらざきせん)鹿児島中央(かごしまちゅうおう)駅。

 「玉手箱」と聞いて頭に浮かぶのはなんと言っても浦島太郎だろう。亀を助けて、竜宮城に行って、その帰りに玉手箱を貰うのだが、言いつけを守らなかった為に若者から一気に老人になってしまうと言う。なかなか衝撃的なお話でもあろう。そして、それは鹿児島(かごしま)県にも走っているのだ。

 白と黒で半分に塗り分けられたディーゼルカーが止まっている。車体には「指宿(いぶすき)のたまて箱」と列車名も入っている。

 この列車に乗っているアテンダントが乗車する人々を出迎えている。

「これにも煙が出る装置ついているのね。」

(もえ)がつぶやく。

 「指宿(いぶすき)のたまて箱」の乗降扉は靄がかかっている。ドライ会う酢が溶けるように白い煙がかかったその演出は玉手箱そのものである。その靄を通ると少し冷たい。暑くなっている南九州の空気と僕らの暑苦しい服装は少なからず冷却される。これの正体は水だ。

「うーん・・・。眼鏡に水滴がついた・・・。」

「適度に冷たいのが良いじゃない。」

「・・・浦島太郎ってさ、若者から老人になったけど、老人が玉手箱の煙を浴びたらどうなるのかな。」

「えっ・・・。うーん、アンチエイジングされたりして。」

「無いだろ。」

「夢を壊すな。」

鹿児島中央(かごしまちゅうおう)9時58分→「指宿(いぶすき)のたまて箱1号」→指宿(いぶすき)10時49分

鹿児島中央(かごしまちゅうおう)枕崎(まくらざき)間の乗車券使用開始

 「指宿(いぶすき)のたまて箱」は指宿枕崎線(いぶすきまくらざきせん)へと入る。指宿枕崎線(いぶすきまくらざきせん)吉都線(きっとせん)などと同様あまり軌道がしっかりしていないのか、跳ねるように走る。列車がスピードを上げるとはね具合は激しさを増す。白ウサギと黒ウサギが草原をかけずり回っている感じと形容しても良いかもしれない。

 この列車は指宿(いぶすき)が終点になる為、指宿(いぶすき)から先へ行く為には列車を乗り換えなければならない。終点の枕崎(まくらざき)まで向かう列車を待って、僕たちは枕崎(まくらざき)に行くことにする。枕崎(まくらざき)まで行くとすぐに折り返しの列車に乗り込み、西大山(にしおおやま)駅で下車する。

指宿(いぶすき)11時27分→枕崎(まくらざき)12時52分

鹿児島中央(かごしまちゅうおう)枕崎(まくらざき)間の乗車券使用終了

枕崎(まくらざき)13時18分→西大山(にしおおやま)14時14分

枕崎(まくらざき)西大山(にしおおやま)西大山(にしおおやま)で下車時運賃精算の上乗車

「はい、はい。また来ましたよ。西大山(にしおおやま)駅。」

「さっきは通り過ぎたからなぁ・・・。」

西大山(にしおおやま)駅には「日本最南端の駅」という看板が立っている。4月には日本最北端の駅にいて、それから2ヶ月近く経った今日本最南端の駅までやってきたのだ。

「稚内にいた時はこんな所まで戻ってくるとは思わなかったねぇ・・・。」

「そうだな・・・。来ようと思えばこんなに時間もかからずにこれるんだけどねぇ・・・。」

「あえてそれをしなかっただけだからね。」

「・・・。」

「・・・もうすぐ終わるのね。」

「終わるんだな・・・。」

「ナガシィ、もう少し長くてもよかったんじゃないかな。」

「・・・延長戦はもう無いな。」

「・・・そう。」

「さっさとドロイド読んで、指宿(いぶすき)の砂風呂にでも入ろうか。」

「入ってるところ写真撮ってあげる。」

「えっ、(もえ)は入んないの。」

「・・・どうしようかな・・・。」

「入れ。これは命令。」

「フフフ。はーい。」


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