702列車 禍々しい鉄路
2062年5月15日・月曜日(第69日目)天候:晴れ 東日本旅客鉄道北陸新幹線長野駅。
ホテルを出て、北陸新幹線に乗る。
長野9時00分→「はくたか664号」→高崎9時47分
金沢から来る「はくたか号」の自由席は混んでいるだろう。そう思って僕たちは指定席に乗り込んだ。その目論見は当たったとみていいだろう。
47分の間に「はくたか」は坂を駆け下り、高崎駅に到着する。僕たちは前回と同様高崎駅で途中下車することにした。
最長往復切符復路高崎駅で途中下車
今日高崎で途中下車したのは日本の鉄道史上最も苦しめられた線区を見に行こうと思ったからだ。そのためにはまず横川まで行く信越本線の列車に乗らなければならない。信越本線の列車は10時22分に横川行きが設定されている。
「そういえば、今日のお昼ご飯はどうするの。」
萌が聞いてくる。
「今日のお昼ご飯は決まっているようなもんでしょ。」
僕はそう言い、売店で峠の釜めしを買った。横川駅や軽井沢駅でたくさんの人が購入したという駅弁の一つである。僕たちが奥羽本線峠駅で買った力餅と同じように停車時間を利用して売られていた物だ。峠駅の場合はスイッチバックの方向転換にかかる時間だが、こちらはEF63形という横川~軽井沢観戦用の電気機関車連結のための時間に目を付け、売られていたのだ。
僕たちは峠の釜めしを片手に信越本線で横川に向かう列車へと乗り込む。
高崎10時22分→横川10時56分
高崎→横川間のIC乗車券使用開始
高崎を出発し、しばらく走ると高崎の街を抜ける。すると風景は一気に変化した。辺りはビルから山や畑など田舎の風景に様変わりする。その変わりようには驚くしかない。
「何か、凄い変わっちゃったね。」
「高崎でただけだよ。こんなに変わる。」
北海道の市街地を過ぎたら原野みたいだな・・・。
遠くの山々はどこか禍々しい。この先にある悪路を予見したような風景である。いや、それは僕たちが色眼鏡を通してこの風景を見ているからなのか・・・。そのせいであると思いたい。
30分くらい走ると山の中が開けた。5両編成の電車が止まるには大きすぎる設備がある。高崎から延びる信越本線の終点横川駅に到着したのだ。
「横川ってもうちょっと街なのかと思ったけど。」
「思いっきり山の中だな。」
「こんな山の中なの、横川って。」
「そうだなぁ・・・。横川ってもうちょっと街の中にあって、軽井沢まで一気に登ってくって感覚だったけど、山の中から険しい山を登って軽井沢って避暑地に到着してたんだな。」
この感覚は改められた。来ないと分からない物だな・・・。
小さい改札口を抜ける。こういう場所でもIC対応の自動改札が設置されているのも驚きである。
駅の外に出て少し軽井沢の方面へと歩みを進めると鉄道博物館が見えてくる。こちらは碓氷鉄道文化村という鉄道博物館だ。
お金を払って、僕たちはその鉄道博物館に入った。ただの平日と言うこともありここに来ている人はまばらである。
入ってすぐに出迎えてくれるのは新幹線で使われる保守用の車両だった。その車両の横を通り過ぎて、橋の下をくぐって中に入るとそれは待っていた。
「これが・・・。」
僕たちはそれに呆気にとられた。




