696列車 朱鷺はペリカン
2062年5月12日・金曜日(第66日目)天候:曇り 佐渡汽船国道350号線両津港。
「はい。」
萌は酔い止め薬を渡してきた。
「まぁ、今渡しても遅いんだけどね。」
「いや、多分これがあればねぇ・・・。」
それから両津港近辺をでる路線バスに乗って朱鷺資料館に向かった。
トキは日本・中国・韓国に生息する鳥。また、学名が「ニッポニアニッポン」となっているなど、日本の鳥であることが強調された鳥である。ただ日本では2003年に野生絶滅、さらに国鳥はキジという不遇さもある。しかし、在来線の特急列車として名前が採用されると新幹線の開業を機に栄転。一度の名称廃止を挟んでからは新潟行きの新幹線として定着している。
「それよりも驚いたのはさぁ・・・。」
「うん。」
「ペリカン目トキ科なんだよねぇ。トキの種族って。」
「ペリカン・・・。」
「うん、ペリカン。」
「ペリカンってあれよねぇ。くちばしの下に復路がある鳥よねぇ・・・。水の近くで済んでるのは変わらないけど、ペリカンの面影なくない。」
「ペリカンっぽくないよなぁ・・・。」
学術的な観点から元はコウノトリ目に属していたという。しかし、コウノトリ目とペリカン目が近縁の種類と言うことが分かったので、コウノトリ目をなくしてペリカン目に入れた。そして、コウノトリ目に入っていたトキ科はそのままペリカン目に入れられたというのが事の真相らしい。そう言うのはよく分かんないが、いい加減なもんだなぁ・・・。
さて、そう言う勉強をしてから、展示を見ていこう。
展示の中にはトキにこちらの姿が見えないようにあえて暗くしているところもある。そう言うところからはトキのありのままの坑道を見ることができる。
「あの子ちょっと黒くない。」
萌がそう言って1羽のトキを指さした。トキは綺麗なピンク色をしているのだが、その時は所々黒くなっていて、ピンク色が台無しになっている。
「あっ、本当だ。繁殖期なんじゃない。」
「繁殖期になったら自分で黒くするんだっけ。」
「自分で黒くするって言うのもなんだかなぁ・・・。トキからしてみれば泥パックみたいなもんなのかな。」
そう、自分で黒くするらしい。トキって言うのは大人になっても結構お茶目に泥遊びをするらしい。
「じゃあ、ナガシィが夏に黒くなるのは私を振り向かせたいから。」
「ぷっ、それは日に焼けただけだって。」
「でも本音は。」
「そんな本音はありません。」
「・・・ホテルで聞いてあげるわ。」
「はい、はい。」
ゆっくり朱鷺資料館をまわって、両津港に戻る。バスに乗っている間に酔い止め薬を飲んだので、今度は大丈夫だろう・・・。
両津港15時30分→「ジェットフォイル」→新潟港16時35分
「・・・大丈夫。」
萌が背中をさすってくれる。
「うん、ありがとう・・・。」
ダメでした。
新潟17時43分→吉田18時38分
吉田18時42分→柏崎19時54分
最長往復切符復路柏崎駅で途中下車




