542列車 途中の無人駅
2062年3月2日・木曜日(第-5日目)天候:晴れ 東海旅客鉄道中央新幹線甲府駅。
「あずさ20号」から降りて中央新幹線乗り場に来てみた。
「リニアって途中駅には駅員さんいなかったよね。」
萌が言う。中央新幹線の途中駅には駅員が配置されていない。改札口の所には改札機だけが設置されている。さて、僕らの持っている切符は改札機に通すことが出来ない。どうするかな・・・。
「あっ、これか・・・。」
僕は改札口のすぐ隣にインターポンがあるのを見つけた。「ご要望がありましたら、ボタンを押してください。JR東海お客様センターの係員が対応します。」と書かれている。インターホンの右側には「お手持ちの切符を置いてください」との表示が有り、ある程度の大きさの切符をおけるスペースがある。上にはモニターが有り、つながるとこちらの映像を見ながら係員が対応するのかな。
「押してみるか・・・。」
ボタンを押してみると、モニターに女性が映った。
「お電話ありがとうございます。東海旅客鉄道お客様センター蒲原がご案内いたします。」
と言った。
「あっ、今からリニアに乗りたいんだけど、今自分たちの持っている切符は改札口に通すことが出来ないので、電話させて貰いました。」
と言う。
「はい、かしこまりました。それではお客様、お持ちの乗車券と特急券をお客様右手にあります「切符を置いてください」と書かれましたところへ置いていただけますか。」
「はい。」
それに従い、僕は乗車券と特急券を置いた。萌のも一緒にその隣に置く。
「・・・はい、リニア中央新幹線で甲府から名古屋までご利用お二人ですね。確認いたしました。それでは切符の取り忘れにご注意の上、改札機をお通りください。ご利用ありがとうございます。」
そう言うとインターホンから一番手前にある改札機の扉が開いた。切符を持って改札内に入ると、さっきまで開いていた改札機が閉まる。
「こんな方法でやっていたとはねぇ・・・。」
「こりゃ面倒くさいな。切符持って帰りたいとかっていう人どうしてるんだろう・・・。」
「それってやってないんじゃない。私ツイッターでそう言うの見たことないけど。」
「そう・・・。」
考えてみればそうかもな。今の時代僕たちみたいな複雑な切符でどこかに行くという発想がないのだろうな。点と点を一直線に結んでいる感覚しかないから、そもそもそういう利用を想定していないのかもしれない。実際、リニアの利用者であらゆる場所にある点を網羅して、リニアに乗る人など一握りなのだろうなぁ・・・。
ホームにあがるとこれまた殺風景だ。待合室などは完備しているものの、ほぼ何もない。
「ふじ号」が高速で通過する。その一瞬だけ、耳をふさぎたくなるほどの轟音があたりを包む。
「かぁ・・・さいねぇ・・・。」
「ああ、さすが500キロだな・・・。」
「リニア新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。まもなく11番線に15時29分発「みらい529号」新大阪行きが到着いたします。安全柵の内側までお下がりください。列車は前から1号車から、2号車の順で一番後ろが16号車です。」
東京方面からロングノーズを持ったL3系が入線する。
「「みらい」初めて乗るね。」
「ああ。」
「500キロもGPSで調べる。」
「調べちゃおうか。」
甲府15時29分→「みらい529号」→名古屋16時05分
ドアが閉まる警告音がしてから数秒後、リニアは車のような鋭い加速で甲府駅から離れ始める。GPSのスピードメーターアプリの数字はすぐさま50キロを超え、本線に合流する。本線に合流すれば加速はさらに鋭さを増し、すぐに100キロを超え、接地感が消える。
「今浮いたね。」
「分かるもんなんだな・・・。」
トンネルに入りGPSを測位出来なくなる。次にGPSが測位出来たときスピードは389キロを記録した。
一口メモ
「みらい」
リニア中央新幹線開業時に設定された各駅種別。全車指定席で自由席の設定は運行する全ての列車でない。




