657列車 最果てに延びる鉄路
2062年4月23日・日曜日(第47日目)天候:晴れ 北海道旅客鉄道宗谷本線塩狩駅。
塩狩13時11分→名寄14時01分
「この列車は普通列車名寄行きワンマンカーです。東六線、北剣淵、下士別、瑞穂、東風連には停車いたしません。ご注意ください。」
塩狩駅から列車に乗る。H100形はモーター音を響かせて峠を下っていく。しばらく走ると列車は左にカーブする。どの辺りから暴走しだしたのか。それによって異なるが今のカーブなら脱線しなかったかもしれない。だが、何れは脱線しただろう。それが和寒駅だった場合は・・・。和寒駅とその市街地に1両の客車が突っ込んでいたかもしれないのか・・・。それがどれほどの破壊力を持つのかは想像したくはない。
塩狩→和寒間車内にて運賃精算の上乗車
最長往復切符往路和寒駅から使用再開
「ワッ、寒っ。」
和寒駅に戻ってきたので、ノルマ達成。
和寒駅を出発、次の駅は剣淵駅である。
その間に小さい木の板が線路の脇を通り過ぎる。あれはただの木の板ではない。駅だ。とても駅には見えないが、あれは東六線という駅なのだ。列車はその駅を無視して、次の大きい剣淵駅に停車。
剣淵駅を出て、次の駅は北剣淵駅。当然通過。次の大きい駅。士別駅に停車。
士別駅をでて、次の駅は下士別駅。当り前だが、通過。
さっきから通過する駅はただの木の板ばかり。それもH100形1両でさえ収まることのできないほどの大きさのものばかり。未だに営業していることの方がおかしいくらいだ。本当に利用者いないんだろうなぁ・・・。
多寄に停車。
「次は風連。風連です。瑞穂には停車いたしません。ご注意ください。」
駅でてから注意されてもなぁ・・・。
大きな街に出るとそこはこの列車の終点名寄駅だ。
最長往復切符往路名寄駅で途中下車
僕たちは名寄駅でいったん降りた。次の稚内方面行きの列車は14時31分発特急「サロベツ3号」稚内行きだ。
しばらく待合室で待ってから、
「まもなく14時31分発の特別急行「サロベツ3号」稚内行きの改札を行います。「サロベツ3号」をご利用のお客様、「サロベツ」の特急券と乗車券を駅係員までお願いします。」
とのアナウンスが流れる。僕らが出てきた改札口の所には駅員が発ち、少し並んだ特急列車の利用客が次々と改札の中へと入る。
「僕たちも入ろう。」
特急券と乗車券をみせる。特急券にはすぐに入鋏済みの判子が押されたが、切符の方にはなかなか押されない。考えてみれば、最長往復切符の表面は途中下車印で埋め尽くされている。
「切符の裏面の方に押しますね。」
そう言われ、裏面に判子が押された。
ホームで待っている時間は少ない。しばらくすればキハ261系が入線する。朝乗った「サロベツ」とちょっとだけ顔が違う。ヘッドライトは横目ではなく、つり目になっている。1000番台みたいだが・・・。
「フュッ。」
先頭車両が通り過ぎる。1両丸々グリーン車だった1号車は結構手が加えられているらしい。1号車の半分がグリーン車で、もう半分は普通車になっている。グリーン車と普通車の間は窓1枚がはいるくらいの空間があり、窓を埋めた後もあった。
「これって他の普通車に乗るより1号車に乗った方がお得だよねぇ。」
僕が言う。
「何で。」
「いや、だって1号車以外の普通車はシートピッチも普通なわけでしょ。1号車のはグリーン車のシートピッチでなわけだし・・・。」
「ああ、乗り得ね。」
萌はそう言ったが、
「せっかくグリーン車のルンだから、そのままでよくない。」
それもそうか。
名寄14時31分→「サロベツ3号」→稚内17時21分
「フィフューッ。ブルルン、ズドドドドドドドドド・・・。」
相変わらずの加速力を見せつける。電車並みの加速力で名寄のホームはグイグイ後ろへ過ぎ去っていく。
「まもなく、列車が揺れますので、お立ちのお客様はご注意ください。」
いつもの自動放送が流れる。
「今日も北海道高速鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は特急「サロベツ3号」稚内行きです。次は美深、美深です。この先野生動物が多く生息する区間に入ります。走行中やむを得ず急停車することがありますので、あらかじめご了承ください。」
このアナウンスも北海道ならではのものだろう。
キハ261系はエンジンを吹かし、右へ左へぐねぐねと川沿いを走る。名寄の街を出ると一気に生活感というものは失われていった。
美深、音威子府駅と停車。天塩中川を過ぎて、さらに北へと進む。名寄を出発して1時間30分経ったが、まだ1時間30分のこりの行程が残っている。天塩中川と聞くと僕らの感覚ではかなり北の方に来た気がするのだがな・・・。
車窓の左側に物置が通り過ぎ、次の駅では朽ち果てた家屋らしきものが流れていく。この辺りには人間の手が入ったものの、寂れてしまったところだろう。周りを見ても誰があの駅を利用するのか分からない。
日が西に傾き、まもなく日本海に沈もうとしている頃、左側の車窓が開ける。遠くに大きい富士山のような山が見える。利尻富士だ。あれが見えるとまもなく南稚内駅だが、その駅はまだまだ遠い。
「まもなく、南稚内。南稚内です。」
「ようやっとここまで来たね。」
僕は萌に言う。
「本当。まさか、こんな所まで来るとは思わなかったわ。」
「やっと半分が終わったな。」
「まだ半分なのね。」
「でも、果てしなく長いって事はなくなったな。もう半分終わったんだし。」
「千里の道も9割行ったら半分と思うようにしとかないと。まだまだ半分も残ってるんだから。」
「ハハハ。そうだな。」
列車は南稚内駅に停車。短い停車の後すぐに発車する。
「次は終点、稚内。稚内です。どなた様もお忘れ物の無いようお支度ください。今日も北海道高速開発鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございました。」
17時21分。終点稚内到着。
「終点、稚内。稚内です。どなた様もお忘れ物の無いようお支度ください。今日も北海道高速開発をご利用くださいまして、ありがとうございました。自動放送のご案内は・・・。」
最長往復切符連絡会社線北海道高速開発鉄道線入線
最長往復切符往路稚内駅にて使用終了
最長往復切符稚内駅で途中下車
一口メモ
北海道高速開発
宗谷本線の高速化のために設立された団体。旭川~名寄間の高速化のために設立されたが、後に名寄~稚内間の鉄道線を受け持つこととなった。第三セクター方式をとり、列車運行は北海道旅客鉄道に依存する。しかし、線路設備などはこちらが持っているため、本来の北海道旅客鉄道では廃止に追い込まれていた駅でさえ存続する事態を起こしている。




