536列車 作成依頼
車内チャイムの中では壮大さ満点のメロディーが流れる。この壮大なチャイムは今乗っている車両が九州旅客鉄道所属であることを示している。
「まもなく小倉です。鹿児島線、日豊線、日田彦山線はお乗り換えです。今日も新幹線をご利用いただきまして、ありがとうございました。次の小倉駅では到着後すぐに発車いたします。小倉の次は博多に停まります。」
「っしゃ、人生初の九州入り。」
小さい声で窓際に座っている息子が声を上げる。
「常陸兄、そんなに九州に来たのが嬉しいの・・・。」
稲穂が聞く。
「嬉しいに決まってるでしょ。新幹線でここまで来たって事に意味があるんじゃないか。」
「・・・。」
常陸それは稲穂には絶対理解出来ないことだと思うよ。私は心の中でそうつぶやいた。
「お母さん。私達大分に行くんだよねぇ。」
「そうよ。」
「何で、博多まで行くの。博多まで行ったら方向違いじゃ。」
「方向違いね。でも、博多ラーメンとか食べてみたくない。」
「そりゃ、食べてみたいけど・・・。」
「いいじゃん、「ソニック」に全区間乗れるって事で。」
だから、それは稲穂には理解されないって・・・。
10時27分に博多に到着する。常陸は降りてすぐに行き先をカメラに収める。乗ってきた列車はすぐにドアが閉まり、博多駅を出発する。
「ありがとう、「あかつき623号」。」
そう言い、常陸は出発する列車に手を振る。
「二人とも行くわよ。」
「常陸兄。いつまでも新幹線見送ってないで。お母さんが行くって。」
「はいはい。」
階段を降りて、有人の改札口を通った。今回切符は守山→大分で買ってある。この乗車券のままでは新幹線で博多に来ることは出来ないため、小倉→博多を新幹線経由で、博多→西小倉を在来線経由で購入してある。一方の特急券は「あかつき623号」は新大阪→博多で、大分に行く「ソニック25号」は博多→大分で購入してあるので問題はない。
「お母さん、この切符を見せればいいの。」
稲穂が小倉→博多の乗車券と「あかつき623号」の特急券を持って聞く。
「そうよ。要らない切符は駅員さんが回収してくれるわ。」
「分かった。」
私と常陸は切符を貰い、稲穂は切符を回収して貰って改札口を出た。改札口を出ると私はみどりの窓口を探す。まぁ、すぐに見つかったけど。
「常陸、稲穂。ちょっとここで待っててくれない。私みどりの窓口行ってくるから。」
「はぁい。」
「お母さん、行ってる間に・・・。」
「稲穂、常陸がどっかに撮り鉄に行かないように見張っててね。」
「・・・。」
「諦めろ、常陸兄。」
「畜生、ここでしか見れない車両が多いというのに・・・。」
20分後、
「お待たせ。時間かかっちゃった。」
「お母さん、みどりの窓口で何してたの。」
「んっ、おじいちゃんとおばあちゃんにプレゼントを頼んだの。」
「二人にプレゼント。みどりの窓口で買うって事は切符。」
「そうよ。別に二人には言ってもいいわよ。」
「どうして。秘密にしとかないと二人をビックリさせられないよ。」
稲穂はそう言ったが、
「他人が使う切符だからなぁ・・・。秘密に出来るのは特急券ぐらいなもんだろ。」
そう言うところは察しがいいなぁ、常陸。
「・・・何かよくわかんないけど・・・。」
「もうすぐ11時かぁ・・・。どうする早めにご飯にする。」
「賛成。」
「その前に撮り鉄。」
「撮り鉄は後になさい。「ソニック25号」は12時57分発なんだから、その時撮ればいいでしょ。常陸、今日は稲穂とお母さんがいるの忘れないの。」
「はぁい・・・。」
(それにしても、本人達はアレで良かったのかしら・・・。アレは・・・いや、それは邪推ってものよね・・・。)
九州旅客鉄道博多駅に最長往復切符を依頼した5日後、最長往復切符の完成したとの連絡が私の携帯に入った。
一口メモ
「あかつき」
九州新幹線長崎ルート全通時に設定された長崎ルート最速達種別。停車駅は「新神戸・(姫路)・岡山・(福山)・広島・(新山口)・小倉・博多・佐賀・諫早」となっている((○○)書きは一部停車)。8両編成で自由席3両、グリーン席0.5両、それ以外は2&2シートの指定席である。山陽新幹線では「のぞみ」と同じ料金体系となっている。定期列車はN700系7000番台(西日本旅客鉄道所属N700Z)と8000番台(九州旅客鉄道所属N700Z)専属で運用されている。




