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MAIN TRAFFIC6 -日本一の切符2062-  作者: 浜北の「ひかり」
Longest Japan Railways Ticket
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535列車 切符あれこれ

 私はエクセルを開き、日本の簡単な路線地図を作り始める。最長往復切符は子これを作ることから始まる。自分で計算するという手もあるが、そんなことをすれば、一生かかっても完成しないだろう。これが一番手っ取り早い方法だ。

「やってるなぁ・・・。」

そう言うと光ちゃんが私の後ろに座る。

「金銭的支援をすることは決まったんだし、後はこれを完成させないと。」

 もちろん、考えるのは経路だけではない。果たして、コンピュータが計算したルートで一枚の切符として成立するのかどうか。これも問題である。

 例えば、基本的に私鉄線を最長往復切符のルートに組み込むことは出来ない。これは私鉄線を通るとJRの切符は私鉄線に入る駅で運賃が一旦切られ、私鉄線からJR線に戻った駅から再び運賃の計算がスタートする(※1)。この場合、切符は1枚で成立しない。

※1:JR線→A駅(起点→A駅までで運賃計算)→B駅(B駅から運賃計算再開)→JR線

 しかし、私鉄線を通っても運賃計算が継続される路線もある。IRいしかわ鉄道金沢(かなざわ)→津幡間、IGRいわて銀河鉄道(ぎんがてつどう)盛岡(もりおか)好摩(こうま)間、伊勢鉄道(いせてつどう)河原田(かわらだ)()間、えちごトキめき鉄道上越妙高(じょうえつみょうこう)直江津(なおえつ)間。土佐(とさ)くろしお鉄道窪川(くぼかわ)若井(わかい)間、阿佐海岸鉄道(あさかいがんてつどう)海部(かいふ)甲浦(かんのうら)間。他にもあるがここに書いた私鉄線は通り抜けた場合でも運賃計算が継続される(※2)。よって、発行される切符は1枚で成立する。

※2:A駅→JR線→金沢(かなざわ)駅→(IRいしかわ鉄道)→津幡駅→JR線→B駅(A駅→B駅で運賃計算)

まぁ、私鉄線で組み込むところは決まっている。IGRいわて銀河鉄道(ぎんがてつどう)盛岡(もりおか)好摩(こうま)間。ここを組み込むことでJRの最長往復切符のルートを最大値にまで延ばすことが出来る。

 次に考えるのは新幹線と在来線だ。新幹線は基本的に並行する在来線と同じ路線として扱われる。例えば、東京(とうきょう)新大阪(しんおおさか)間を東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん)で移動する場合、運賃は東京(とうきょう)新大阪(しんおおさか)間を東海道本線(とうかいどうほんせん)で移動するのと同じである。

 そして、「基本的に」と書いて例に漏れず、これにも例外がある。それは新幹線駅が在来線駅に併設していない区間である。例として東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん)新富士(しんふじ)駅をあげよう。新富士(しんふじ)駅は新幹線しか入っておらず、在来線駅に併設されていない。この新富士(しんふじ)を挟んでいる三島(みしま)静岡(しずおか)間は「発駅もしくは着駅、または接続駅とする」場合に限り、東海道本線(とうかいどうほんせん)とは別路線として扱うとあるのだ。

 なんともまぁ、ややこしいことである。

 しかし、このややこしさが重要になるところもある。最長往復切符では富士山の周りを一周する時がある。その時、この別路線として扱うという項目が生きてくるのだ。

 次に考えるのは運賃計算で使用する路線。運賃計算はまず乗車経路のみで行われる。だが、ここにも注意しなければならないところがある。山科(やましな)近江塩津(おうみしおつ)間を例に挙げて説明しよう。

 山科(やましな)近江塩津(おうみしおつ)間は2つの経路がある。一つは湖西線(こせいせん)経由(74.1キロ)。もう一つは米原(まいばら)経由(93.6キロ)だ。この時運賃計算は距離の短い湖西線(こせいせん)経由で行われる。

 最長往復切符のルート上であるこういう場所は呉線(くれせん)海田市(かいたいち)三原(みはら)間(運賃計算時は山陽本線(さんようほんせん)経由)と京葉線(けいようせん)東京(とうきょう)蘇我(そが)間(運賃計算時は総武本線(そうぶほんせん)外房線(そとぼうせん)経由)である。特に京葉線(けいようせん)の場合はなぁ・・・。

「光ちゃん、私行もJRの規定が複雑だと思ったことないわ。」

「だろうね・・・。でも、亜美(あみ)だって出札はやったことあるから分かってるでしょ。」

「ううん。私のやった出札じゃあこんなのはなかったわ。新幹線を別線扱いする特例とか、JRと接続する私鉄線の選定とか。鉄道ファンのほとんどはこういうの持ち込んでこなかったしね・・・。光ちゃんの言うとおり、私がやってたのは何も分かってない利用者相手の業務でしかなかったわ。」

これは素直に認めざるを得ない。みどりの窓口にやってきたお客のほとんどは「京都(きょうと)から東京(とうきょう)に行きたい」とか「京都(きょうと)から白浜(しらはま)に行きたい」というごくごく単純なもの。計算には比較的苦労のないものばかりだった。

「・・・。」

「私、今になって東海旅客鉄道(ジェイアールとうかい)辞めたの悔やむわ。」

「ウチがやろうか。」

「光ちゃんは明日も仕事でしょ。何も分かってない嫁じゃないんだから、ここは私に任せなさい。」

「・・・頼りにしてるよ。」

光ちゃんはそう言ってから、

「そういえば、切符の発行は結局どうするの。」

「それなんだけどね、常陸(ひたち)大分(おおいた)行きたいって言ってるのよ。」

「その時発行を依頼するの。」

「ええ。それまでになんとしても作ってやるわ。これはデータ入力しちゃえば早いし。」

「・・・分かったよ。大分(おおいた)気をつけて行ってこいよ。」

「うん、ありがとう。」


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