暴雲波乱の殺し屋・リン part5
「リンちゃん、もしあれだったらしばらくこの家に住む?」
「ん?」
一体この人は何を言っているんだろう。
「そうだね!聞いた限りじゃあんまり良い暮らしとはいえないし、そんな悪烈な環境で過ごしてたらリンちゃん自身可哀想だもん。ハル姉何かとお金持ちでもあるし、リンちゃん一人増えても家計的に大丈夫でしょ?」
「何言ってるんだ明日香。お金持ちとはいえ、仮にも居候の俺たちがそんな勝手な事ばかり言っちゃ駄目だろ?ハル姉、そういえば今月のお小遣いまだ貰ってないから後で頂戴。」
「お兄ちゃん、本当自己中丸出しね。」
だってしょうがないんだもん。
「そうそう、子供は遠慮しちゃ駄目なんだから。リンちゃん、ここは居候しちゃいましょう?」
「毎日美味しいもの食べられる?」
そんな事を言いながら目を輝かせるリン。
…………なんか、若干否定気味の自分が情けなく見えるのは仕方ない事なのだろうか。
いや、命を狙われた分そうなっても仕方ないのが事実。
「もちろんよ!いっぱいお姉ちゃんが美味しいの作ったげる。」
「欲しい物も何でも買ったげるよー。」
「ちょっとまて!」
俺もめっちゃ買って欲しい物ある!
「お兄ちゃんは駄目。」
「心の中を読むんじゃない。」
恥ずかしいだろ。
「まあ莉依は所詮莉依だからともかく、リンちゃんは美味しいものいっぱい食べさせてあげるからねー。」
「…………そういえば、組織に連絡しなきゃいけない事、ある。」
…………あー、これ何気に聞きたくないかも。
組織という単語が妙に悪い予感を呼び起こす。
「どんな連絡なの?」
やめろ明日香、聞きたくない!
「夕暮莉依の暗殺任務失敗及び、組織を抜ける報告」
嫌だー!絶対これ他の刺客送られてくるパターンじゃん!もう面倒なのは嫌ー!
「だめだ。組織に連絡なんて、そんな危険な事は私が許さない」
さすがハル姉、大人らしくわかってんじゃん。
「とりあえずお風呂に入ろう。汗とで身体中気持ち悪いだろ。報告とやらは私が代わりに伝えに言ってやるから心配するな!」
「それなら心配ない……」
「心配するわー!なに人の暗殺失敗報告代わりに請け負ってるんだよハル姉!?いや怖えよ!もう町歩けねえよ!そこはもう死んだ事にしておこうよ?」
これは何かと嫌なパターンが的中してしまったらしい。
ハル姉は妙な所でアホ臭いからこれはマジでやるつもりだ。
「何を言っているんだ莉依?どっちにしても隠居生活しない限りは町中で姿を補足されたら殺されるだろ?どっちにしても死ぬなら堂々としろよ?」
いや、命を狙われて堂々とするってどういう事?それ遠回しに死ねって言ってるよねハル姉?
「それについては大丈夫……のはず。元々私は莉依を殺すつもりは無かったから」
いや、命あれだけ狙われて殺すつもり無いは流石に無いと思うのですが。
「組織的にはただ莉依の戦闘力を測りたかっただけ……」
無垢な顔でそんな事を言い出すリン。
戦闘力って……どゆこと?
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