暴雲波乱の殺し屋・リン part3
波乱の旅路第一章
「ふぅ~」
「…………」
とてつもなくどうしたものかわからない状況。
とりあえず器用貧乏の上位互換である明日香に連絡したからすぐに来てくれるらしいが、ハル姉は現在外出中のため遅れてくるらしい。
さすがに縛りっぱなしは可哀想なので手と足以外は拘束を解いてあげた。
「…………どうして」
「ん?」
「どうしてあなたは強いの?」
そういえば何故おれはあんなに凄い動きが出来たのだろうか。
昔ハル姉の拳法や剣道、体操やボクシングに普通の喧嘩。
フルボッコにされた代わりに得た体の動きは、今もなお健在のようだ。
だからこそわかること。
「ただ殺すのが殺し屋の仕事なら、ただ痛いのが怖いから避けるのが俺だ」
「…………そう」
不服そうにも、ちょっと目尻に涙を溜めて笑うリン。
疲れたのかしばらくすると眠りについていた……。
「お兄ちゃーーん!大丈夫!?」
あらかた情報を伝えておいた明日香には状況生理が早く着いたのか、おれに近づくと……
ペチンッ!
「えっ!?」
何故か頰っぺを叩かれた。
「心配かけんなバカ兄ーー!超心配したんだからね!?」
あれ、これ怒られてんのか説教されてんのかどっち!?
「まぁ無駄に運動神経の良いお兄ちゃんなら死なないって思ってたけど……本物心配かけないでよ、、」
「ごめん……」
てか、おれ何も悪い事はしてないはずだが!?
そもそも被害者じゃね!?
「この子が……その、殺し屋さん?」
ヨダレを垂らしたまま眠りこける超絶美少女は、一応ベッドに持たれかけさせていたのでスヤスヤ眠っていた。
歳は14……って、言ってたから外人さんか何かだろうか。
とにかく警察沙汰になるのはおれとこの子、どっちにとっても都合が悪い。
ので1度ハル姉のマンションに連れて帰ってからハル姉に任せようという事になった……。
「この子、結構可愛いね♥」
「いや、一応殺し屋さんだから注意はしろよ?」
超絶美少女は可愛いが、ロクな奴はやっぱり居ないのがこの世界の摂理なのかもしれない……。
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………………。
「リンはどうなった?」
「さぁね。まあ失敗したんじゃないの?あの子地味にいい子っぽい所があるから……無罪の人は殺さないし」
放課後、帰り道をふらつきながら喋る2人の美少女。
赤髪の女の子は口にチュッパキャンデーを口に咥え、紺色髪の女の子はつまらなさそうにカバンを振り回している。
「でもまあ今回の依頼は飽くまで私達殺し屋のメンバーに適正があるか試すための裏試験じみた所があるからリンも本気出せなかっただろうねー」
赤髪の女の子はふらりと自販機の前に立つと、にらめっこをしている。
「ふんふん、ど~れ~が~出~る~か~なっ!」
そう言って自販機を蹴ると、1缶のコーラが出てきた。
「やったー当たりだ!イェーイ!」
ご機嫌にコーラを飲みながらチュッパキャンデーをかじる女の子。
それを呆れたように見ていた紺色の少女は、小さく呟く。
「夕暮 莉斗……もとい夕暮 莉依。彼の力は私ら時雨団の力に必要なものがある。やっぱり私達が直接コンタクトを取るしかないかな……」
「何ぶつぶつ言ってるのさ柚姫?また陰湿なグチ!?」
柚姫と呼ばれた少女はスマホ画面に映る莉依をしばらく見つめ、
「何でもない。行くよ、グレア」
「はーーい!」
そう言って、何事も無かったようにグレアと共に夕日に消えた……。
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