暴雲波乱の殺し屋・リン part2
波乱の旅路第一章
「リン……殺し屋」
殺し屋さんーーー!?初めて見たけど殺し屋さんーーー!?
いやいやいやいや無いでしょ何このファンタスティックな展開、地味に目が怖いんですけど!?
目の前でケーキかじってるこいつが殺し屋さん?この超絶美少女が殺し屋さん?ただの中二病にしか見えないコイツがか!?
「ちなみに何歳?」
「14歳」
やっぱりただの中二病じゃねえか!?年齢まで中二じゃねえか?
しかもこいつナイフ持つ手がめっちゃ小さい。
おれより小さいとか……小学生レベルだぞ!?
「ちなみにそのケーキおれのなんだが……」
「…………知らない。」
「おい今の沈黙は何だ!?おれのケーキだろ!?おれのケーキなんだろ!?」
「どの道あなたを殺すならあなたの物をどうしようと言われる筋合いは無い」
「いやいや、それ以前に殺す事に対して物言わせてくれない!?そもそも誰だよ俺の命狙ってんの!?俺そんなに悪い事した!?」
「知らない……ただ私は仕事をするだけ」
そう言ってリンはごちそうさまをして平らげた皿を置くと、俺に向かってナイフを投げ、背中から短めの刀を取り出す。
模造刀でない辺り、コスプレで無いのは目に見えている。
おれはナイフを間一髪で避けると共にドアに向かって全速力で駆けるが、俊敏な動きを駆使しているリンはあっという間におれの間合いに入り込むと、刀を下から振り上げた。
「うおっ!?」
運動神経抜群時代……中学の全国大会で争った時の勘がおれの体を動かす。
寸での所をバク転を利用してリンの手首を蹴りあげ、後ろへ引くと救急箱から包帯を取り出した。
手首が揺らいだ反動で刀を放したリンは体勢を整えると、左手で宙に舞う刀を再び取った。
冗談だと思ったが、これは間違いない。
パチモンでも無ければ、コスプレでも無い。
本物の……殺し屋だ。
目が虚ろなのは殺し慣れているからか、そのまま真っ直ぐ突進して来る。
背後は壁でこれ以上引くことは出来ないが、利用する事は出来る。
イチかバチかッ!
「…………これで終わり」
斬撃が抉るように壁に風穴を空ける。
「ッ!?」
その瞬間、右側に避けた俺はリンに向かって体温計を投げると、条件反射でそれを避けようとその場を引いたリンは壁に刺さった刀に引っ張られ、予想外に深く刺さった刀は抜けない。
「く……、刀が?抜けない……」
これこそおれの狙い。
その隙ををおれは見逃さなかった。
「といやーー!」
「うぁっ…あ!」
リンに向かって飛び付くと、その幼気な体に先程取った包帯を巻き付ける。
保健室で世紀の超絶美少女2人がイチャイチャ……。
傍から見たら楽園のような景色も、殺し屋さんに命を狙われた現場と知れば風情もクソも無いだろう。
身動きの取れないリンはしばらくもがいたが、やはりそこは女の子。
破るだけの力は無かったらしく、半ば名残惜しそうに諦めた……。
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